念願の昭和館に行ってきた
博多から「こだま」に乗り換えて小倉まで行き、駅から10分ほど歩くと見えてくる、九州で最も古い(昭和14年から存在する)ミニシアター
昭和館のすぐ近くにある旦過市場は、2022年の4月に、そしてわずか4か月後の8月にも、火災に見舞われている
昭和館は、4月の火災からは逃れられたものの、8月の火災で焼失し、現在あるのは昭和館を愛する多くの人の援助もあって再建されたもの
新しい建物なのに、長く愛されてきた映画館であることがよくわかる佇まい
館内にも憩いの場があったり、席もスクリーンとの角度などがよく考えられていて、本当に素晴らしい映画館
再建までの過程については、三代目館主の樋口智巳さんが書かれた「映画館を再生します。」に詳しく書かれています
さて、肝心の映画の方は、大好きなザンドラ・ヒュラー主演の「落下の解剖学」
原題「Anatomie d'une chute」(邦題は直訳ながら、ひと捻り欲しかった)
ベストセラー作家であるサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)は、夫と11歳の視覚障害のある息子、そして彼のサポートもできる愛犬スヌープと一緒に、フランスの人里離れた山荘に暮らしていた
ある日、スヌープと散歩から戻ってきた息子ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)は、山荘前の雪の積もった地面に、父親が倒れていることに気づき、大声で母を呼ぶ
すぐに駆け付けたサンドラだったが、頭部からかなりの出血をした父は、その時点で既に息途絶えていた
当初は山荘の最上階からの転落死と思われたが、不審な点も多く、また死亡前日に夫婦で激しい言い争いをしていた事実(録音)も判明し、裁判ではサンドラに殺人の疑いがかかる
知りたくもない両親の言動が裁判で明かされ激しく消耗するも、裁判から逃れるどころか、唯一現場にいた証人として対峙するダニエル
果たして判決の行方は?
攻撃的、そして恣意的な判事(これぞフランス的な)を演じたアントワーヌ・レナルツが印象的
152分と長く、面白い起承転結があるわけではないこともあって、否定的なレビューも散見されていたけれど、観終わっての感想は「ずっしりと観応えのある(そして何処が素晴らしいか説明しづらい)良作」
伝えたい大きなメッセージは見当たらないけれど、親子や夫婦の関係の深いところを克明に、とはいえ間接的に描いた(夫婦喧嘩の本質の一部が見事に描かれている)、あまりにも個人的な好みの作品で、念願の昭和館で観るのには最高だった
なかなか小倉まで行くのは大変だけど、いつかまた昭和館を再訪したい
明日は、ザンドラ・ヒュラーと同じくらい、意地悪そうな笑顔が素敵な女優が主演している作品をご紹介