109シネマ二子玉川にて鑑賞
「希望の灯り」や「ありがとう、トニ・エルドマン」などの演技で好きになったザンドラ・ヒュラーが主演、そして原題「The Zone of Interest」というタイトルにも惹かれた
ナチスに加担した人を描いた作品は、「ハンナ・アーレント」をはじめ、「6月0日 アイヒマンが処刑された日」、「キエフ裁判」、そして「愛の嵐」など観てきたけれど、本作では、アウシュビッツ強制収容所で働く男とその家族の暮らしが描かれている
これまでのどの映画よりも熱量が低く、家族の幸せな日常生活が淡々と描かれる
The Zone of Interestとは、アウシュビッツ強制収容所を取り囲む、40km2のエリアを指す言葉らしいのだけれど、この家族が暮らす大きな庭のある素敵な家は、同じエリアどころか、収容所の壁一枚隔てた隣にある
壁は高く、中の様子は見えないけれど、子供たちがプールではしゃいでいる最中や、妻が庭の手入れをしている時にも、銃声が響き、黒煙があがる
ところが妻(ザンドラ・ヒュラー)は、自ら植栽の配置からこどわった庭や、子供たちを育てる環境に殊の外満足していて、夫の転属が決まると露骨に不満を示し「あなたと離れるのは淋しいけれど、単身で行って」と告げる
世界大戦中のことでもあり、軍人だけでなく、日常生活を営む家族でさえ精神的に異常な状況だということは理解しているし、2-3km離れていれば平気だとも思わないけれど、この家族の感覚には空恐ろしさを感じざるを得ない
不穏な効果音が異様に支配する上映中、隣の席でポップコーンを食べながら見ている男性に、(程度は果てしなく違うけれど)同じような印象を持ってしまった
明日はあの銃乱射事件を扱った映画をご紹介