都内のミニシアターの中で、まだ行けていなかった下高井戸シネマ
三軒茶屋から路面電車(世田谷線)に揺られて、終点の下高井戸まで
駅から徒歩2,3分で、普通のマンションっぽい建物の2階にあった
以前観た「ハンナ・アーレント」や、最近読んだ「アイヒマンと日本人」の影響で鑑賞
数百万人のユダヤ人をアウシュビッツに移送する指揮を執ったナチスドイツの親衛隊中佐・アドルフ・アイヒマンは、大戦後に偽名を使い、難民を装って西ドイツからイタリアに入り、そこから船でアルゼンチンに逃れる
その後、家族も呼び寄せ、ブエノスアイレス近郊に約10年暮らすも、1960年に、イスラエル諜報特務庁(モサド)により身柄を拘束され、イスラエルに連行された
当時、元ナチス党員や戦犯容疑者を含むドイツ系移民が受け入れられていた南米(横柄なアメリカへの反発から、ドイツには好意的だった)から、アイヒマンをイスラエルに連行するのは至難の業(正規ルートではもちろん不可能)で、薬で眠らせたアイヒマンに客室乗務員の制服を着せ、酒に酔った非番の乗務員を装ったという
本作は、アイヒマンが有罪判決を受け、処刑された頃のイスラエルで、焼却炉作りに関わった少年を中心に描かれている
死刑制度の無いイスラエルで、特別な例として、5月31日の深夜から6月1日になる瞬間を、(正式には存在しない)「6月0日」としてアイヒマンを処刑、またユダヤ教では火葬をしないことから、処刑されたアイヒマンの遺体を秘密裏に処理すべく、ある町工場の社長ゼブコ(ツァヒ・グラッド)に声が掛かる
ちょうどその頃、狭い焼却炉の中を掃除できる子供を探していたゼブコは、職を求めて父親とやってきたダヴィッド(ノアム・オヴァディア)を採用、幼いダヴィッドもこの「極秘プロジェクト」に関わるようになる
町工場には、左腕に囚人番号の刺青が入った板金工がいたり、アイヒマンに特別な感情を持つ者も多く、「悪者退治」的なストーリー
いつか、西ドイツからブエノスアイレスまで逃亡するアイヒマンを描いた映画(が製作されたら)観てみたい
ちなみに先述の「アイヒマンと日本人」では、(アイヒマンとまったく接点の無い)日本人が何故彼に特別な関心を持つのか、についても書かれているけれど、納得の内容(興味のある方は是非)
先述した、国として認めていない死刑であったことや、ユダヤ教に反する火葬にしたことに加え、国際裁判ではなく(大戦後に建国された)イスラエルでアイヒマンを裁き、処刑したことに対して(また他国から非難の声があがらなかったことに)は、民族としての強い意志を感じる
明日は、難しい親子関係を描いたPFF作品をご紹介