無人島シネマ

忘れてしまうには惜しい映画 および雑記

50. 50年後のボクたちは

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「永遠には続かない夏が、永遠に思える瞬間」

 

をそのまま映画にしたような作品

 

 

主人公のマイクは14歳、クラスにも馴染めず、裕福な家庭に暮らすも父は浮気、母はアル中という厳しい環境で、唯一の癒しはクラスで一番の美女、タチアナを眺めること

 

そんなある日、かなり風変わりで絶対に係りあいたくない感じのチックというロシア系の転校生がやってくる

 

マイクも最初は煙たがりながらも(互いに周囲に馴染めないふたりは)自然と仲良しになっていく

 

そして迎えた夏休み

 

他にやることもない二人は、盗んだボロボロのラーダ・ニーヴァ(ロシアなどで製造されている4WD車 プーチンが釣りに出かける時に乗る車らしい)で旅に出ることに

 

 

 

ドイツでベストセラー、そして世界中で翻訳されたヴォルフガング・ヘルンドルフの小説を元にした2016年のドイツ映画

 

 

将来のことを考えると結構辛い状況でも、ちょっとした楽しみが救いになることに気付かせてくれる

 

素直に「観て良かった」と思える作品

 

 

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49. デッドマン・ウォーキング

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1995年のアメリカ映画

 

原作者ヘレン・プレジャン、また監督、脚本を務めたティム・ロビンス死刑廃止論者ではあるけれど、本作では制度の是非に偏ることなく(制度に反対する遺族も公平に描かれている)ストーリーが展開していく

 

 

ニューオリンズの貧困地区で、尼僧として働くヘレン(スーザン・サランドン、プライベートでは長年ティム・ロビンスのパートナーだった)は、死刑囚のマシュー(ショーン・ペン)のカウンセラーになる

 

マシューの罪状は、10代のカップルの殺人と強姦

 

無罪の主張も却下され、死刑判決を受けるも、ヘレンは最後まで死刑を回避しようと奔走する

 

 

死刑執行当日も、時間ギリギリまで知事への嘆願の返事を待ち続けるが、上訴審は却下され死刑執行が確定してしまう(ヘレンはマシューに勇気を与えんと神に祈り続ける)

 

そして最後の面会、マシューはヘレンから預かっていた聖書を返却し、あることを告げる

 

 

 

 

この映画が公開された頃には、死刑制度について深く考えたことがなかったけれど、数年後に本作を観て、マシューに対して「感情移入できない」、「救うべきとは思えない」、という気持ちがあることに気づいてから、この問題について自分なりに考えてみようと思った

 

 

ちなみに今年(2020年1月に)公表された、日本の内閣府が死刑制度について5年に1度実施している世論調査の結果では

 

「死刑もやむを得ない」と容認する割合は80・8%

 

4回連続(過去20年間)での8割超え

 

 

 この問題は「法によって生命を奪うこと」の是非だけでなく、死刑を実施することによる影響、又実施しないことによる影響も併せて考える必要があるところが難しいところ

 

 

もし死刑制度がなかったら、「スリー・ビルボード」や「オールド・ボーイ」、「バッファロー '66」などの映画作品も存在しなかっただろうと思うと(罪を犯す可能性にかかわらず)如何に人間の生活に影響を与える問題なのかわかる

 

 

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48. 海よりもまだ深く

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2016年公開の是枝監督作品

 

 

「なりたかったオトナ」になれたのか?

 

 

というテーマに、「なれなかったオトナたち」がもがく様子を描いている

 

 

 

みんな生きていく中で、希望を抱いたり目標に向かって努力したりするけど、現実には失敗や挫折の連続でなかなか理想が叶うことはない

 

かつて文学賞を受賞した作家の良多(阿部寛)もそのひとりで、作家としての活動は長いものの、今は休眠状態で(作家活動としてのリサーチとして)興信所の調査員として生計を立てている

 

元妻の響子(真木よう子)には愛想を尽かされているけれど、月に一度の息子真悟(吉澤太陽)との面会日を楽しみにしていて、その日ばかりはつい無理をして散財してしまうのだった

 

その大事な面会の日、団地で暮らす母、淑子(樹木希林)の元を訪れるも、夜に台風の直撃を受け、良多と真悟、そして真悟を迎えに来た響子は、淑子の家で一夜を共にする羽目になってしまう、、、

 

 

 

とにかく良多がだらしなく、周囲は呆れながら彼に忠告する

 

「どうして今を大切にせず後で悔やむのか」と

 

 

本人にしてみれば大した悪気はないのだけど、(大事なことだと理解はしていても)目の前の別な(些末な)ことに気をとられ、つい疎かになってしまう、、、その姿は本来直面すべき課題から逃げ続けている様にみえる

 

この「後回しにしてしまう」癖?というのは、今だと程度によっては ADHD(多動性障害)と言われてしまうけれど、本作ではもちろん

 

「まったくもう、この人ったら」

 

という扱われ方である

 

皆、遅かれ早かれ、渋々課題に向き合っているわけで、そういう意味では良多のだらしない暮らしぶりは羨ましくもある

 

 

映画タイトルは、本編にも登場するテレサ・テンの「別れの予感」より

 

ハナレグミの「深呼吸」も本作の「人生、思うように行かないよなあ」という空気感にぴったり

 

 

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47. ディア・ハンター

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1978年のアメリカ映画

 

今となっては贅沢なキャスト

 

ロバート・デ・ニーロクリストファー・ウォーケンジョン・カザール、そして本作で映画デビューから二作目というメリル・ストリープ

 

ストーリーの中では、メリル・ストリープクリストファー・ウォーケンに求婚されるけれど、プライベートでは、前年に舞台で共演したジョン・カザールと本作の制作時に婚約、そしてジョン・カザールは本作の公開を待たずして癌で亡くなっている

 

 

ピッツバーグ郊外の製鉄所で働くマイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーブン(ジョン・サヴェージ)、スタン(ジョン・カザール)たちは、週末に皆で鹿狩りに出掛けるのを楽しみにしている若者たち

 

ベトナムに徴兵されることが決まったマイケル、ニック、スティーブンの壮行会とスティーブンとアンジェラ(ルターニャ・アルダ)の結婚式が一緒に行われる

 

そしてニックはその場でリンダ(メリル・ストリープ)にプロポーズし、新たなカップルも誕生する

 

 

ベトナムでは苦戦が続き、三人は現地で偶然再会できたものの、敵側の捕虜として捕まってしまう、、、そして連行された小屋の中では、北ベトナムの監視兵たちが捕虜に向かってギャンブルとしてロシアンルーレットをさせるという異常な事態になっていた

 

精神的に壊れてしまったスティーブンに対し、冷静なマイケルは、自らも精神的に壊れた体を装い(6分1の確率で実弾を込めていたところ)3発に増やすよう要求する、、、

 

 

 

 

この作品に対しては、ベトナム戦争を否定するシーンがほとんど無いことや、ロシアンルーレットのシーンの必要性が疑問だとか、愛国主義的なものを感じさせるとか、いくつかの批判がある

 

また、ベトナム戦争がテーマの映画にしては戦闘シーンがなく、それを補う意味でのロシアンルーレットなのだという見方もある

 

ロシアンルーレットの脚本は当初からあったものの、それだけではインパクトに欠けるとして、ベトナム戦争というテーマが「後付け」されたという逸話には驚かされる

 

しかも当時のハリウッドは、ベトナム戦争をテーマに映画をつくることに積極的ではなく、イギリスの会社から資金を得る為の「デコレーション」として後付けしたというのだから、(40年以上経った今からは想像することも難しいけれど)当時の難産具合が伝わってくる

 

学生時代に観て気に入った作品だから、つい贔屓目にみてしまうけれど、(そういう批判や疑問の声を考慮しても)素晴らしいエンターテインメント作品だと思う

 

 

戦闘シーンがあって、事実に沿った、反戦のメッセージが含まれるベトナム戦争映画が必ずしも素晴らしいとも思わない、、、ヒッチコックだって殺人シーンを撮らずに殺人を表現したのだ(ちょっと違うか?)

 

スタンリー・マイヤーズの美しいテーマ曲「カヴァティーナ」も印象的

 

 

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46. 恋恋風塵

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恋風塵「れんれんふうじん」

 

87年の台湾映画

 

 

今回観たのはHDデジタリリマスター版ということもあって、台湾の田園風景の美しさに圧倒された 

 

もちろん技術進歩もあるのだろうけど、距離や角度や光の当たり方など、総合的に映像として美しいのがよくわかる 87年の作品にはとても思えない

 

 

ストーリーは1960年代の終わり頃の台湾の山村

 

成績優秀な少年アワンと、彼に密かに惹かれている一歳年下のアフンが成長していく過程を描いた作品

 

アワンは中学卒業と同時に台湾で働きながら夜学に通うことに決める そして1年後にはアフンも追いかけるように卒業後台湾に出てきて仕立て屋の仕事を見つける

 

ふたりは田舎から都会に出てきて戸惑いも感じながらも助け合い、いろんなことを経験していく

 

 

そんなある日、アワンに兵役の召集令状が届き、遠く離れた金門島に派遣されることになる

 

 

それからふたりは毎日のように手紙のやり取りをし、近況報告をしていたが、程なくしてアフンからの手紙が届かなくなる アワンのもとには受取人不明となって戻ってきた手紙が溜まっていき不安な毎日を過ごしていると、アワンの弟から一通の手紙が届く

 

 

 

SNSの浸透した)30年以上経った今からすると(意思の疎通が叶わないことに)もどかしいことこの上ないけれど、そんな人間の焦りと、悠然とした美しい田園風景との対比が何とも言えない

 

 

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45. シティ・オブ・ゴッド

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おそらく世界で最も有名なブラジル映画(2002年)

 

時代が随分異なるけれど、知名度では「黒いオルフェ」と双璧かもしれない

 (ちなみに「未来世紀ブラジル」はイギリス映画です)

 

 

 

60年代のリオ・デジャネイロ

 

スラム街ファベーラに住むブスカペは、優しい性格でこの街で暮らしていくには弱すぎる少年 兄やその仲間たちは銃を持ち犯罪に手を染めることで貧困からの脱却を夢見ている

 

その中の一人で、周りのストリートチルドレンたちよりも目立つ存在だったリトル・ダイスは、ある日仲間と一緒にモーテルを襲撃し初めて殺人を犯した後に逃走する

 
70年代に入り、17歳のブスカペ少年もカメラに興味を持ったり(周りの仲間たちに比べると遅蒔きながら)気になっているアンジェリカに必死でアプローチをしていた頃、リトル・ダイスがリトル・ゼと名前を変えてファベーラに戻ってくる
 
(以下長目に書くので、これから本作を観る方は ***** までスキップください)
 
 
 
 
 
 
 
 
 

早速、リトル・ゼは親友のベネと麻薬の密売を始め、敵対する麻薬組織を抹殺しついには神の街を牛耳るところまで登りつめる

 

そして自分が頂点に立ってからは、安全な麻薬売買のルールを敷き、強盗や殺人の禁止するお触れを出すことで(陰で自らは殺人を行いながらも)警察をも手懐けていく

 
ブスカペがアプローチしていたアンジェリカは、リトル・ゼの相棒ベネの彼女になり(ふたりで郊外に引っ越し安全に暮らしたいと)ベネに組織を抜けることを提案し、ベネもそれを受け入れ、彼女と二人で生きていくことを選択する
 
ベネの送別会には、いつもの仲間からギャングとは関わりのない街の人たちまで集まり盛大に行われるも、会場でベネはリトル・ゼと間違われ殺されてしまう
 
相棒を思わぬ形で失ってしまったリトル・ゼの暴走は止まらず、そこから相手組織との殺人行為が繰り返され、一般市民をも巻き込んだ一大抗争に発展する
 
抗争から1年が経ち警察が介入し始めた頃、撃たれて警察に捕まった相手組織のひとりが、ギャングのボスとしてマスコミに取り上げられ注目される
 
これに(「ボスは俺様だ」と)気分を害したリトル・ゼは、新聞社でカメラマン見習いとなっていたブスカペを呼び出し、自分の写真を撮らせる
 

 

 

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ここまで書いてもまだストーリーの途中、、、130分という長さ以上に、その濃さに圧倒される

 

しかも語り部的なポジションのブスカペを差し置いて、数人の「準主人公」が入れ替わりで中心になるという構成に加えて、目まぐるしく切り替わるカットが、スリリングなシーンの緊迫感をより高めている

 

ドキュメンタリーとしての価値の高さは明らかだし、ギャング映画として、犯罪に手を染めざるを得ない環境や、その背景を描くことにも成功している

 

 

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44. マルティナは海

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2001年のスペイン映画

 

スペインの港町に赴任してきた国語の教師ウリセスが、下宿先の娘マルティナにひと目ぼれしてしまい、父親が心配していた通りに(!)ふたりは愛を育み、子宝に恵まれことで渋々結婚を許される

 

マルティナには、結婚する前からずっと言い寄られているお金持ちの実業家シエラがいて、結婚後も時々マルティナに近づこうとするも、ウリセスにしか関心が無いマルティナはまったく相手にしない

 

ある日ウリセスは、小舟で釣りに出掛けたまま戻らず、翌日船は発見され、引き揚げられるもウリセスの遺体は見つからないまま、、、そして 数年後、マルティナに一本の電話がかかってくる

 

 

 

今まで観たスペイン映画の中では(ビガス・ルナ監督の作品の中でも)最もスペインらしい作品

 

登場人物の言動も、ストーリーの展開も、イギリス、ドイツとは明らかに、フランスとも、さらにはイタリアともひと味違う、情熱とルーズさと人懐っこさとが面白い 

 

欧州各国の国民性の違いを「隙の無さ」で例えると、

 

イギリスは規律でそれを維持し、ドイツは精神衛生上をれを守り、フランスは損しないように気を付けることでそれを叶え、イタリアはついそれを忘れてしまい、スペインは(若干イタリア的な面もありながら)粋としてそれを放棄する、、、と言うのはちょっと褒め過ぎか?

 

微笑ましいスペインの緩さが感じられる作品

 

 

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