無人島シネマ

忘れてしまうには惜しい映画 および雑記

248. ぶあいそうな手紙

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引用元:映画.com

 

2019年ブラジル映画

 

新型コロナウィルスの影響で、2020年は劇場に行くのもかなり控えていたけれど、9月に入って状況が落ち着いてきたこともあって本作で解禁(その後また行くのを控えたり、再開したり)

 

 

約半年振りの劇場での鑑賞は、両横4席づつくらい、また前後斜めも空席で心地良く観られた 

 

 

 

ポルトアレグレ、ブラジル南部の街に独りで住む老人、エルネスト

 

ウルグアイから移り住んで早46年、視力もすっかり衰えて、今では新聞も読めなくなってしまった

 

頑固な性格で、サンパウロに住む息子にもつい辛辣な態度をとってしまい、今となっては、隣に住むハビエルくらいしか親しくする人はいない

 

そんなエルネストの元に、一通の手紙が届く

 

同じアパートの犬の世話をしている若い娘、ビアと知り合い、エルネストは彼女に手紙を読んでもらうことにする

 

 

 

 

高齢になり、視力も落ちて、頼れる人も限られてくると、気持ち的にも心細くなってくる様子が、リアルに描かれていて、まだ先のこととは思いながらも自分の老後を想像してしまった

 

自然と、周囲に頼る機会も増えるだろうし、また経済的にも厳しくなると、いくら気丈な人であっても、威厳を保つのが難しくなるだろう

 

そう思うと、自分の情けない部分を隠す必要のない相手と、共同或いは近所で過ごすことが理想なんだろう

 

 

カエターノの「ドレス一枚と愛ひとつ」を劇場で聴けたのも嬉しかった

 

美味しい食べ物に、美しい自然、サンバにボサノヴァ、そしてフットボール

 

ブラジルには羨ましいものがたくさんあるけれど、多くの国民がカエターノ・ヴェローゾの音楽を聴いて育っていることは、彼の曲にまつわる個人的な思い出が皆にあったり、仲の良い人と一緒に聴きながら歌ったり、語り合ったりできるのだから、上記の中でも最も羨ましいことかもしれない 

  

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247. 時代屋の女房

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引用元:shochiku.co.jp

 

大井町が舞台の作品

 

品川駅までひと駅、そして横浜まで20分ながら、どこかタイムスリップしたような感じの町

 

随分前に「きゅりあん」という大井町にあるホールで行われるライブを観に行ったきりだけど、その日早目に着いてしまい周囲を歩き回っていると(街並みの独特な雰囲気に)何だかえらい遠くまで来たような気になったのを覚えている

 

 

 

 

1983年の作品

 

時代屋という屋号の骨董屋を営む男、安(渡瀬恒彦)のところに、一風変わった女、真弓(夏目雅子)が居ついてしまう

 

あぶさんという名前の猫と一緒に

 

品物じゃなくて、時代を売るから時代屋

 

ということで、安物ばかりではあるものの歴史と思い出に溢れた品が店内に所狭しと並べられている

 

 

一緒に暮らすようになってからも、安は真弓がどこから来て何をしていたか一切尋ねない

 

そして真弓は、突然出て行ったきり数日帰ってこないことがあり、安だけでなく街の人(飲み屋やクリーニング屋の人たち)も心配しながら帰ってくるのを待つ

 

 

 

 

80年代東京の風景が余すところなく収められていて、改めて40年という時の長さを感じさせられる

 

もう帰ってこないと思われていた真弓が、時代屋の前の歩道橋を歩きながら手に持った南部鉄瓶(以前、安と仕入れに向かった盛岡の古民家で買えなかったもの)を、戦利品のように嬉しそうに掲げている(↑ のポスター参照)ところがラストシーン

 

 

まるで猫の様に定住しない真弓を失いたくないハズなのに、「互いに干渉しない主義」を決め込んで必死に我慢する安

 

今のご時世「愚か」の一言で片づけられるのかもしれないけれど、無粋よりは愚かであろうとする昭和の美学が感じられる

246. パプリカ

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引用元:Yahoo!映画

 

2006年公開のアニメーション映画

 

今敏監督、原作は筒井康隆

 

 

或る日、夢を共有する装置「DCミニ」が何者かによって盗まれる

 

そしてそれが悪用され、他人の夢に強制介入し悪夢を見せて精神を崩壊させる事件が起こってしまい、DCミニを操作するサイコセラピストのパプリカは、粉川警部の協力を得ながら犯人を追う

 

美しくアクティブなパプリカが主役のようではあるけれど、ストーリーはむしろ粉川警部の過去のトラウマを中心に進んでいく

 

彼の夢の中に入り込んでいくと、未解決事件が彼に与えた心理的影響は最終的に彼が若い頃に諦めたある夢に辿り着く

 

 

 

 

夢がテーマであることから、フロイトユングの提唱した夢の解釈が出てきたり、粉川警部の諦めた夢のメタファーが随所にでてきて(若干理屈っぽい感じはするけれど)練られたストーリーとして安心して観られる

 

本作の真骨頂とも言える夢や潜在意識の映像化は、サウンドや色使いそしてアニメーションそのもののレベルの高さに大きく支えられているのを感じる

 

その夢や潜在意識の映像には、純和風というか「日本人でないとピンと来ないのでは?」と思われる素材が多く使われているけれど、海外でも高く評価されていることが示すように、日本固有な印象があるものでも類似したものや考え方は他の国にもあるのだろうし、無かったとしても十分にカバーできる想像力があるのだろうな

 

というか(自分が海外の作品を観る時のことを考えれば)海外作品の魅力の最たるもののひとつだと再認識させられる

 

という風なことを観終わってから考えた

 

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245. 偶然と想像

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「ドライブ・マイ・カー」がゴールデングローブ賞を受賞したことで話題の濱口竜介監督

 

パラサイト 半地下の家族」、「ミナリ」、「ノマランド」、「万引き家族」などアジア人監督作品のノミネートや受賞がが相次ぐ中での嬉しいニュース

 

「ドライブ・マイ・カー」は原作を読んでいることもあって、劇場で観るのは本作を優先

 

 

 

三話のオムニバス作品

 

 

タクシーの中でつぐみ(玄理)から気になる男性の話を聞かせれrたモデルの芽衣子(古川琴音)

 

先につぐみがタクシーを降り、ひとりになった芽衣子は、運転手に「いま来た道を戻ってください」と告げる 「魔法(よりもっと不確か)

 

 

 

大学生四年生の佐々木(甲斐翔真)は出席日数が足りなくて単位を落とす

 

作家兼教授の瀬川(渋川清彦)にかけ合うも断られ、折角の就職内定もご破算になってしまう

 

そんな瀬川の元に佐々木の同級生の奈緒(森郁月)がやって来て、有名な賞を獲った瀬川の小説にサインして欲しいと言う 「扉は開けたままで

 

 

 

仙台駅のエスカレーターで高校の時のクラスメイトのあや(河合青葉)に出会う夏子(占部房子

 

20年振り、しかも偶然の再会にふたりはしばらく盛り上がって話し込むも、完全に逸したタイミングでとある確認作業を迫られてしまう 「もう一度

 

 

 

三話ともに「かなりイカれたストーリー」

 

登場人物の殆どは、人との距離を縮めることに長けている人たち

 

そういうのが苦手な自分としては、ちょっと考えにくい設定や展開ではあるものの、話の面白さについ飲み込まれてしまった

 

最初から最後まで「平均して高い集中で鑑賞できた」という意味では過去最高レベルだった

 

 

濱口監督のインタビューで「人とのコミュニケーションは難しいけれど、誰しもそれを上手くやろうとしている」というニュアンスの発言があったけれど、その気持ちが強すぎたり弱すぎたりすると、ちょっとした綻びができてしまうのだろう

 

本作の登場人物は、そうした難しさに果敢にチャレンジしているし、言語化できない感情を大切にしながらも可能な限り言語化する努力をしていて偉いなと思った(人によってはチャレンジする環境も無いのだろうけれど)

 

オムニバス映画って、大抵出来栄えに差があったりするけれど、この三話はまったく違う話なのに、どれもイカれててどれも面白い

 

どれが好きかアンケートとったら均等に分かれそうな気がする

 

 

 

 

何度か流れるシューマンの「子どもの情景」がとても効果的

 

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244. ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ

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引用元:amazon.co.jp

 

前回からジェニファー・コネリーつながりで本作を

 

 

「移民がニューヨークでマフィアとしてのし上がる映画」は、世の中にひとつあれば充分な気がするけれど、この長編映画は無視できない

 

ゴッドファーザーⅡ」(1974年)と「Ⅲ」(1990年)の間、1984年に公開されたアメリカ・イタリア映画

 

ゴッドファーザー」シリーズがファミリーの絆を描いたのに対して、本作は一人の男の少年期から青年期、そして老年期を描いている

 

初回版(144分)はコンパクトというよりも、「折角の情緒が台無しな編集版」という印象

 

鑑賞するなら是非完全版(229分)を!

 

最初の10分を観れば(話に引き込まれて)あっという間なのだから

 

 

 

 

 

1920年代のニューヨーク

 

ユダヤ系移民の少年、ヌードルスロバート・デ・ニーロ)は、酔っ払いから財布を抜き取ろうとするも、ある少年に阻まれる

 

マックスというその少年(ジェームズ・ウッズ)とは、いがみ合いながらも似た者同士のふたりは次第に仲良くなっていく

 

ふたりは他の仲間たちと、禁酒法をすり抜けながら荒稼ぎし、街のギャングの中で頭角を現していく

 

しかし強引な計画を立てるマックスに苛立ち、ヌードルスは彼を裏切り、マックスは警官に殺されてしまう

 

そして30年後、ヌードルスの元に一通の手紙が届き、マックスに対する後ろめたい感情を抱えながらもニューヨークに戻ってくる

 

 

 

 

ヌードルスが幼い頃憧れた女性、デボラをジェニファー・コネリーが演じている

 

バレエを踊っているデボラを覗いた場所に、長い時を経て戻ってきたヌードルスに昔の光景がフラッシュバックするシーンは(全編エレガントな本作の中でも)最高に美しい

 

そのバックにはモリコーネによるクラリネットで奏でられるアマポーラ

 

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243. 砂と霧の家

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引用元:Yahoo!映画

 

2003年公開のアメリカ映画

 

父が残してくれた、ベランダから海が見える一軒家に住むキャシー(ジェニファー・コネリー

 

ところが税金の払い漏れをきっかけに、当局の手違いでこの大事な一軒家が競売にかけられてしまう

 

退去させられたキャシーがモーテルに寝泊まりしている間に入居したのは、頑固そうな年配の男性(ベン・キングズレー

 

その男はイランでは大佐だったにもかかわらず、政変で国を追われ妻と息子を連れアメリカに住み、工事現場やコンビニの仕事を掛け持ちしながら競売物件をチェックしていた苦労人

 

イランで過ごした海岸沿いの家に似た、見晴らしの良いこの家が競売で格安に売りに出されているのを知り、購入を即決した

 

その後、当局は非を認め、苦肉の策として販売した価格での買戻しを提案するも、購入額の四倍で転売をもくろむ男はこれを拒否

 

いつまでも家に戻れないキャシーは弁護士に不満を伝えるも、状況は好転せず、、

 

 

 

 

 

その後も両者の泥仕合が延々と続く、いわゆる「これでもか、これでもか」系のストーリーなのだけれど、ここまで悲惨な話は初めて観たかもしれない

 

「家」や「家族」に対する想いは、誰にとっても譲れない重要なものでありながら、他人にも同じようにそれが存在することへの配慮は、本作に登場する両者には難しく、利己的になるばかりで状況は悪化の一途を辿る

 

 

誰にも「負けられない勝負」は存在するけれど、負けられない時の負け方を身に着けていることも大事だと学んだ作品

 

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242. 赤ひげ

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引用元:Yahoo!映画

 

享保の改革により江戸の貧困層の救済施設として設置された「小石川養生所」は、日本で最初にできた病院

 

本作は、その設置から約100年経った文政の頃の養生所が舞台

 

 

武骨な所長の赤ひげ(三船敏郎)が取り仕切る養生所には、彼を頼って病を患う貧しい江戸の庶民が駆け付けていた

 

そんな慌ただしい養生所に、保本(加山雄三)が、住み込みの医師見習いとしとしてやってくる

 

解体新書やオランダ医学を、長崎で学んできた自負のある保本の目には、赤ひげのやり方は「古めかしく無駄に忙殺されている」ように映る

 

一刻も早くこの場から逃れたい一心で禁を犯し破門されようとする

 

しかし次第に、赤ひげの技術の高さと確かさ、そして何よりも患者との強い信頼関係を目の当たりにして考えを改めていき、自らの経験不足や臆病さを克服する場としてこの養生所で働いていくことを決心する

 

 

 

 

小石川養生所は、現在の文京区にある小石川植物園の中にあった

 

 

戦の世が終わり、人々の関心が健康の維持や、病の治療に向かう中で、当時人口が急増していた江戸の庶民のため、薬草を育てる場所として前述の享保の改革で幕府が設置した場所

 

現在の小石川植物園でも、100種類以上の薬草が栽培されている

 

例えばナツメの実は不眠症や神経衰弱に、コガネバナは消炎や解熱に効果があるそう

 

 

1965年公開の黒澤明監督作品 

 

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