無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

374. ミステリー・トレイン

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引用元:amazon.co.jp

 

1989年のアメリカ映画

 

おそらく5回目くらいの鑑賞

 

ジム・ジャームッシュといえば、オムニバス作品はお手のもの感があるけれど、2003年の「コーヒー&シガレッツ」はもちろん、本作から二年後の「ナイト・オン・ザ・プラネット 」と比較しても初々しい印象

 

 

アメリカ、メンフィスを舞台に三つの話が進んでいく

 

(以下、オムニバスなので簡単なあらずじがネタバレになる可能性もあるので気になる方は読み飛ばしを)

 

 

タイトルは、いま伝記映画が話題のエルヴィス・プレスリーの同名ヒット曲から

 

言わずと知れたロカビリーの名曲ではあるけれど、改めて聴くと、スコッティ・ムーアのグルーヴ感溢れるギャロッピング奏法に、ビル・ブラックのパーカッシブなウッドベース、そしてヴォーカリストが弾くリズム・ギターというレベルや役割を凄まじく超越しているエルヴィスのアコースティック・ギター

 

たった三人で、ドラム抜きでこの躍動感ある演奏をしている(しかも1955年に!)

 

 

 

Far from Yokohama

 

オールディーズが大好きなジュン(永瀬正敏)とミツコ(工藤夕貴)のふたりは、憧れのメンフィスにアムトラックに乗ってやってくる

 

(↑のパッケージ写真のように)ふたりでひとつのスーツケースを仲良く持って、メンフィス駅からエルヴィスゆかりの地などを訪れる

 

共通の趣味を持つお互いのことが大好きなカップルながら、ふたりは些細なこと(エルヴィスとカール・パーキンスのどちらが偉大か、など)でずっと言い合いをしている

 

そして夜になり、つたない英語を駆使しながらフロントと交渉し、「アーケード・ホテル」に宿泊する

 

 

A Ghost

 

ルイーザ(ニコレッタ・ブラスキ)は、メンフィス空港で座席予約がうまく出来ず、仕方なく街中に出る

 

英語は理解していながらも極端に人が良く、またお金にも執着しないせいで、コンビニで要らない雑誌や、ダイナーでエルビスの櫛を買わされてしまう

 

彼女も「アーケード・ホテル」に泊まろうとフロントに来たところ、フロント係と揉めているディディ(エリザベス・ブラッコ)とぶつかってしまい、その縁で?相部屋で宿泊することになる

 

Lost in Space

 

第二話に登場したディディの元カレ(というかフラれたばかり)のジョニー(ジョー・ストラマー)は、仕事をクビになるわディディは出て行ってしまうわで大荒れ

 

バーで泥酔し、拳銃を振り回した挙句、その騒ぎを収めようとバーに駆け付けてくれた友人のウィル(リック・アヴィレス)と義兄のチャーリー(スティーブ・ブシェミ)の三人で飲み直そうする

 

店でボトル二本の酒を買おうとしたところ、店主(ロケッツ・レッドグレア)がウィルに向かって差別的な軽口を叩いたのに激高し、ジョニーが店主を銃で撃ってしまう

 

しばらく車で周囲を逃げ回ってから、三人はウィルの義兄がフロント係をしている「アーケード・ホテル」に向かう

 

 

 

 

冒頭で初々しいと書いたけれど、それぞれのストーリーや、そのシンクロに無理があるわけでは決してなく、非常によく出来ている(同じラジオ局から流れるブルームーンを聴く)けれど、よく出来ている感が目立っている印象(以降のオムニバスでは、よく出来ている感さえ感じさせないほど自然に仕上がっている)

 

 同じくらいの年齢で似たような旅をした経験がある身としては(異性と一緒ではなかったけれど)思い入れたっぷりに楽しめる第一話と、ニコレッタ・ブラスキのこってり演技を楽しめる第二話(こういうキャスティングができるのもジャームッシュのセンスだろう)、そしてグダグダなジョー・ストラマーがいつキレるのか?発砲するのか?逮捕されるのか?冷や冷やしっぱなしの第三話と観所満載な作品 

 

 

ちなみにブルームーンを流すDJはトム・ウェイツ(声のみの出演)

 

そしてホテルのフロントマンを演じているのは(「アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー」でお馴染みの)スクリーミン・ジェイ・ホーキンス