
1974年
軍事政権下のブラジルで国民的スターとして活躍していたエリス・レジーナが、「イパネマの娘」の大ヒットで世界的人気を博し、アメリカで活動していたアントニオ(トム)・カルロス・ジョビンの元を訪ね録音した共作アルバム「エリス&トム」
ボサノヴァ、ブラジル音楽のアルバムの中でも、最も人気のある作品のひとつ
半世紀にわたって埋もれていた、貴重なレコーディング風景を記録したドキュメンタリー映像が4Kリマスターされ、現代のインタビューを追加して完成した本作
これは是非劇場で観なければと、久しぶりに角川シネマ有楽町へ
何年も聴いてきたお気に入りの本作には、二人が歌いながら笑いを堪えきれない様子が収められていることもあって、さぞかし和やかなレコーディングだったのかと思いきや、かなり険悪な雰囲気
アメリカで成功していたトムの目には、エリスの製作チームが田舎臭く映ったのか、厳しい言葉ぶつけるシーンもあり、エリスの当時の夫でアレンジャーだったセザル・カマルゴ・マリアーノとの関係も悪化してしまう
本作には「この1曲の為にアルバムを購入する価値がある」という名曲が(少なくとも)5-6曲あるけれど、特にお気に入りなのが「Só Tinha de Ser com Você(ソ・チーニャ・キ・セール・コン・ヴォセ)」
歌メロよりも、その後ろで鳴っている和音(コードとしては複雑なのに、美しく自然に聞こえる)が特徴的なボサノヴァの中でも、最も深く美しい曲のひとつ
歌詞の内容は、運命的な出会いをした相手への感謝の念がつづられている
本作の中では少しテンポを落としたバージョンが流れるのだが、これもオリジナルに負けず劣らず雰囲気がある(劇場の音質で聴けて本当に良かった)
本作リリースの10年前、アントニオ・カルロス・ジョビンがロスから一時帰国した1964年には、「Caymmi visita Tom」というドリバル・カイーミとの共作アルバム(名盤です)も作られている(他にもブラジル人アーティストとの共作多数)
世界的な成功を収め、ブラジル人アーティストが成功するアシスト役を務める意識だったのだろうか
そういう意味では、国内で圧倒的人気のあったエリスとの共作は、相当なプレッシャーがあったに違いない
明日は、タイトルが気になる作品をご紹介