久しぶりの渋谷イメージフォーラム
そして初めて観るスロヴェニア映画
舞台は、1950年代のイタリアとスロヴェニア(旧ユーゴスラビア)の国境にある、小さな村
美しい景色と、栗がたくさん採れる他には、何も無い淋しいところ
若者は皆、政情不安と仕事の無さに絶望し、都会へ出て行ってしまう
棺桶職人のマリオは、ケチで気難しく、仲間からも嫌われていた
病弱な妻にも優しくすることもなく、まるで使用人のように扱っている
彼は、故郷を捨てたきりの息子からの連絡を待ち続けていた
栗売りのマルタは、戦争に行ったまま帰ってこない夫を待ち続けていたが、夫からの手紙を写真を頼りに、オーストリアに探しに行こうとしていた
そんな二人が、ある雨の日に出会い、互いの境遇を語り始める
イタリアとスロヴェニアが隣国ということはかろうじて知っていたけれど、どんな場所なのか何も知らなかった
本作を観ると、美しい風景に囲まれた、暗く淋しいところだということがわかる
映像美を追求した映画は、ストーリーとの両立が難しく、これまで満足したケースは少ないけれど、本作の場合は寓話的に描くことで、バランス良いエンターテインメント作品に仕上がっている印象
公開初日ということで、幸運にも舞台挨拶があり、グレゴル・ホジッチ監督(右)と、プロデュースと脚本を務めたマリナ・グムジさんの貴重な話が聞けた
監督の祖母が住んでいた場所であり、自身もよく訪れた場所で、「美しくて、暗くて淋しい」この場所に拘って撮った映画とのこと
撮った後で、「村の過疎化、親子の断絶」という、普遍的なテーマの作品だったことに気づいたという
それを聞いてハッとしたのが、観ている途中で「これは、(故郷がほとんど描かれない)東京物語の逆みたいだ」と、ふと思ったこと
マリオは土地を離れないし、尾道は過疎地でもないのに、何故連想したのか不思議
ちなみにふたりは、次のプロジェクトの準備も兼ねて来日したそうで、それは「フルーツに関するもの」で、イタリアやスペイン、そして日本(愛媛や夕張、奈良など)を舞台に考えているという
楽しみでしかたがない
明日は、あの路面電車が登場する映画をご紹介