無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

700. 7月4日に生まれて

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引用元:filmarks.com

 

1989年のアメリカ映画

 

自身もベトナム帰還兵という、オリバー・ストーン監督による、情熱が詰まった大作

 

 

 

 

ニューヨークのロングアイランドにある小さな街、マサピークに生まれたロン(トム・クルーズ)は、1962年に地元の高校に進学する

 

勉強も、部活のレスリングも、そしてドナ(キーラ・セジウィック)という彼女と過ごす時間も大事、という忙しい毎日を送っていた

 

そんな中、高校で行われた海兵隊のリクルーターの説明に感銘を受けたロンは、友人の反対にもかかわらず、軍への入隊を決心する

 

今回は少し長いレビューになってしまったので、これからこの作品を観ようという方は、この先のストーリーは読み飛ばしてください

 

 

 

 

 

晴れて入隊を果たしたロンは、その後ベトナム戦争に従軍し、最も危険な前線に配置される

 

激しい銃撃戦が続き、皆が取り乱す中で、民間人(乳児までも)を誤って殺害してしまったロンはパニックに陥り、仲間のウィルソンまでも射殺してしまう

 

ロンはそのことを上官に報告するも、「お前の勘違いだ」と強く否定されてしまう

 

 

 

その後、ロン自身も敵に撃たれてしまい、野戦病院を経て地元ニューヨークのブロンクスにある病院に送られる

 

戦地を優先するあまり、劣悪な環境にある病院の中で、まともな治療も受けられず、ロンは脊髄を損傷し下半身不随という状態で、車椅子に乗って家に帰ることになる

 

家族や近所の人たちに温かく出迎えてもらったものの、それ以外の周囲の目は、ベトナム戦争への批判的な想いがロンにも向けられているように感じられるほど冷たかった

 

 

さらに、その年の独立記念日(7月4日)のパレードでは、帰還兵として参加したロンは、沿道に集まった人たちの反戦意識と、自身への冷たい視線に強烈なショックを受ける

 

それは彼が幼い頃、自分の誕生日である7月4日に見た地元でのパレードで、傷痍軍人がリスペクトされていたのとは、余りにも違う光景だった

 

唯一の安らぎの場であった自宅でも、反戦に傾く弟から「愚かな犠牲者」として見られていることを知り、愕然とする

 

 

 

翌年、ロンはシラキュースでドナと再会し、彼女が反戦運動に参加しているのを目の当たりにしたことで、ようやく「ベトナム戦争は間違いだった」という考え方を受け入れられるようになっていく

 

しかし、自身が身体を犠牲にしてまで貢献しようとした戦争が、愚かで間違っていたという事実を受け止めることは、自らを精神的に崩壊させ、酒に溺れ(皆の居るところで)母親に暴言を吐いてしまう

 

そんなロンの扱いに困った父親は「状況を変えて、立ち直るために」と、メキシコ行きを勧め、ロンは家も家族も失ってしまう

 

 

 

公開当時、あまりにも話題になったせいか、何となく敬遠していた作品

 

今更ながらすぐに観なかったことを後悔した

 

ベトナム戦争をテーマにした作品という意味での観応えはもちろん、実にアメリカ的なエンターテインメントとしても非常に良く出来た作品

 

描き方にエグ味を感じる箇所もあるけれど、そうした監督の勇み足的なところも含めて作品の魅力に繋がっている

 

 

 

 

明日は、久しぶりにペドロ・アルモドバル監督作品をご紹介