無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

763. まぼろしの市街戦

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引用元:amazon.co.jp

 

1967年のフランス映画

 

と言われなければ、15-20年くらい前の映画かな、と思ってしまう

 

4Kデジタルリマスターのお陰もあるけれど、ストーリーの普遍性もあって、今の感覚で自然に観られる

 

原題は「Le Roi de Cœur」

 

英題も同じ意味で「King of Hearts」

 

邦題も「ハートのキング」で良かったのでは?と思うけれど、これはこれで親切な邦題

 

 

 

1918年、第一次大戦の末期

 

北フランスのとある小さな町では、敗戦濃厚となったドイツ軍が撤退しようとしていた

 

町が無事に解放されるのを待つ市民だったが、ドイツ軍は(自軍に代って進行してくる)イギリス軍にダメージを与えるため、町に時限爆弾を仕掛ける

 

そしてフランス語が話せるという理由(だけ)で、伝書鳩の飼育を担当している、名ばかりの通信兵プランピックに、時限装置解除の任を与える

 

何をすればいいのか見当もつかないプランピックは、取り敢えず町に出るも、敵軍に見つかってしまい、慌てて行きついた精神病院に逃げ込む

 

そこには、施設の外で起こっている悲惨な出来事さえ理解できていない患者たちが、楽しそうにトランプに興じていた

 

追ってくる兵士たちを胡麻化すために患者に紛れ込み、名前を尋ねられて「ハートのキング」と名乗ったことから王様扱いを受ける

 

そしてプランピックと患者たちは、一般市民が避難し、ドイツ軍も撤退して、誰もいなくなった町に繰り出していく

 

 

 

 

ストーリーはもちろん、全体の構成やキャラクターの存在感など、あらゆる面で完成度の高いエンターテインメント作品

 

戦争(反戦)映画のカテゴリーとして、パッと頭に浮かぶ作品ではないかもしれないけれど、数ある中でも好きな作品のひとつ

 

フランスという国、そして人を感じさせる要素が溢れている

 

戦争や精神病院などをコミカルに描くところや、立ち向かうべき悪は隣国という設定、美しさや可愛らしさ、そして楽しさを求める自分たちはファンタジーの世界に浮遊しているようでありながら真理を見つめている、、とシニカルに観ることもできる

 

実直であればあるほど、判断を間違いそうになる、戦時という難しい局面を、したたかな感覚に優れたフランスという国は乗り越え、生き抜いてきたのだろう

 

 

アルジェリア戦争から5年ほどしか経っていない時期ということもあってか、フランス国内では評論家から酷評され、商業的にも失敗したという

 

その後、ベトナム戦争に揺れるアメリカで、反戦映画としてカルト的なヒットをすることで、国内の評価も追いついたと聞くと、

 

「さすがのフランス人も、身近で直近の話を風刺する(される)ことには過敏になるんだな」

 

と、妙に安心してしまう

 

 

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