無人島シネマ

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367. ある画家の数奇な運命

引用元:neverlookaway-movie.jp

 

 

東京国立近代美術館で開催されている「ゲルハルト・リヒター展」に行ってきた

 

 

リヒターは、旧東ドイツドレスデン生まれの画家で、現在90歳になる

 

東京では初めて美術館での個展が開催され(てい)るということで、また彼の半生を映画にした本作を観たこともあって、偶然にも涼しい日に行くことができた

 

映画のシーンを思い出しながら、彼の抽象的な油絵や、写真を忠実に描いたフォト・ペインティングを堪能した

 

 

 

 

前回の「希望の灯り」に続いて東ドイツ関連でもう一作

 

戦時中のドイツ、ドレスデン郊外

 

少年クルト(トム・シリング)の叔母エリザベト(サスキア・ローゼンタール)は、若くて美しく芸術を愛するエキセントリックで魅力的な人だった

 

彼女に懐いていたクルトは絵画に興味を持ち、戦争が終わってから東ドイツの美術学校に通うようになるも、彼女はその前に(精神異常と判断された患者を対象にした)安楽死政策によって殺されていた

 

美術学校で、クルトは少し叔母に似たエリーという女性(パウラ・ベーア)に惹かれ、声をかける

 

その頃、エリーの父カール(セバスチャン・コッホ)が自宅に戻ってくる

 

どうやら、医師である彼は、戦時中にナチス高官のご婦人を診療していたことでロシアから厳しい尋問を受けていたが、その疑いも晴れたようだった

 

そしてクルトとエリーは(障害を乗り越えながら)結婚し、(政治的なテーマで創作を強要される環境から)西ドイツに亡命する

 

 

芸術家ゲルハルト・リヒターの半生を映画にした作品

 

クルトの父は、戦時中に党に参加していたという理由で戦後教職に戻ることも叶わず、

エリーの父も戦後は逃亡生活を強いられる

 

当時のふたりにはまともな選択肢など無かったというのに、戦後は「誤った判断をした」として苦しめられる

 

こうした人たちの存在を考えると、ナチスによる死者の数だけではなく、その数倍の人生が犠牲になっていることに気づかされる

 

 

7歳のクルトを連れて、叔母が「廃退芸術展」に行った帰り、終点でバスを降りてから運転手にお願いしてクラクションを鳴らしてもらう

 

その音を全身に浴びるようにして聴く叔母の姿が印象的(しかしこのシーンをどう理解すれば良かったのだろう)

 

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