無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

462. 冬の旅

 

大好きなアニエス・ヴァルダの、まだ観ていない名作が上映されると知って、「パイナップル・ツアーズ」、「WANDA/ワンダ」に続いて、今年3回目のイメージフォーラム

 

 

原題は「Sans toit ni loi」(「屋根も無く、法も無く」の意)

 

 

モナという名の少女が、放浪の旅の中で遭遇する出来事と、その過程で出会った人々がモナについて語るシーンが交差しながら描かれる作品

 

目的地も、会いたい人も、経験したいことなどが特にあるでもなく、「放浪そのものが目的のような旅」を続けるモナ

 

お金が無くなったら働きはするものの、報酬の対価としての労働時間を提供するだけ

 

痛々しいほどに、それ以上は提供しない、搾取されないぞ、という強い意志が身体から溢れている

 

優しい人たちに「ここでしばらく働いてみたら?」と勧められても、定住を拒んで次の場所に向かう

 

誰にも従わないし、懐かないし、自分の気が向かないことは断固拒否する

 

下心を持って優しくする男、モナの汚い姿を嫌悪する人、ある種の羨望でサポートしようとする女性、、、さまざまな人たちと関りながら、放浪を続ける

 

 

男の放浪はロマンになるけれど、女の放浪は気持ち悪がられたり、性的暴行に繋がったり、社会から嫌悪されたり、とロクなことがない(殆どが外部要因ではあるけれど、モナを見ていると彼女自身にもそうした感傷的な気持ちは無さそう)

 

ラストシーンも、アニエス・ヴァルダらしいポイントにフォーカスしつつ、結論まで明らかにはしない、ファンには堪えられない終わり方

 

 

 

このブログを始める時、最初に選ぶ作品はアニエス・ヴァルダの「幸福」にしようと思っていた

 

この作品を観て知った監督だから、思い入れは無かったけれど、「何だ、この映画は」という純粋な衝撃があった(結局、最初はあまり気負わない方が良いかな、と「おとなのけんか」でスタートさせた)

 

感動したわけでも、共感したわけでもなく、純粋な衝撃

 

今でも特別な作品だけど、他の作品を観ていく間にすべてのアニエス・ヴァルダ作品がお気に入りになってしまった

 

 

 

 

映画館でのトークショーというものを初めて経験した

 

上映後に、コラムニストの山崎まどかさんが、男性の放浪と女性の放浪の違いや、映画「WANDA/ワンダ」やケリー・ライカート監督作品との関連について、(自分が言語化できず、考えもまとめられていなかったところを)丁寧に語ってくれて、話している間何度も大きく頷いてしまった

 

そのお陰で、この映画についての理解が深ったと同時に、複眼的に観られた気がする(それでも余白がたくさん残っている作品ではあるけれど)

 

 

これまで(岩波ホールにお世話になっていたこともあって)イメージフォーラムに行く頻度は低かったけれど、これからは沢山お世話になりそう

 

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