1970年のアメリカ映画
同年のベネツィア国際映画祭の最優秀外国映画賞を受賞するもアメリカ国内でさえ黙殺され「忘れられた小さな傑作」として本邦初公開
とはいえオフィシャルサイトに掲載されている上映館はわずか17(下記)
▼関東
東京 シアター・イメージフォーラム 7/9
群馬 シネマテークたかさき 近日公開
▼北海道・東北
北海道 シアターキノ 8/27
栃木 小山シネマロブレ 9/2
宇都宮ヒカリ座 9/16
▼甲信越・北陸
長野 上田映劇 8/20
松本CINEMAセレクト 9/9
富山 ほとり座 近日公開
▼中部
愛知 名古屋シネマテーク 7/30
静岡 静岡シネ・ギャラリー 8/5
▼関西
大阪 テアトル梅田 7/29
京都 アップリンク京都 8/12
兵庫 元町映画館 近日公開
▼中国・四国
広島 横川シネマ 近日公開
▼九州・沖縄
福岡 KBCシネマ 近日公開
鹿児島 ガーデンシネマ 8/13
沖縄 桜坂劇場 7/16
ということで、「パイナップル・ツアーズ」で久しぶりに訪れた渋谷のイメージ・フォーラムを再訪
ペンシルベニア州東部の炭鉱の町に住む主婦のワンダ(バーバラ・ローデン)は、家事も育児もしないで怠惰な生活を送っていたところ、夫に離婚訴訟を起こされてしまう
夫に抗弁するつもりもないワンダは、採掘場で石炭を拾っていた知り合いの男にバス代をせがんでから、夫とその一族(再婚予定の女性まで連れて)が待つ裁判所に定刻に遅れて入ってくる
右手には火のついた煙草、そして頭にはヘアカーラーを付けたまま
映画が始まってわずか数分間で家も親権も夫も失い、町の女たちが働いている裁縫工場での仕事も縫うのが遅すぎるという理由でオーナーからクビを言い渡され、さらには仮眠をとるために入った映画館でなけなしの現金まで盗まれてしまうワンダ
茫然自失のまま吸い寄せられる様に入った閉店間際のバーで、デニスという男(マイケル・ヒギンス)と知り合い、行くあても現金もないワンダは彼と行動を共にするようになる
時代的にも、そして無鉄砲な主人公が旅するという内容的にもアメリカン・ニューシネマに括られるのだろうけれど、他の(若い男性が反体制を気取って暴れる)作品に比べてスケール感が小さく見えながら、実は断然アウトローでロックな中身
↓ の予告映像にもある「私にはムリなの(I'm just no good.)」という台詞を繰り返すのが印象的
あらゆる期待や責任から強制的に逃れる、何ともパワフルなフレーズ、、、誰もがこのフレーズを使えたらどれ程楽になるか
本作が監督・脚本・主演のデビュー作、そして遺作であること、23歳年上の夫エリア・カザンも制作協力していること、また長い間黙殺されていた本作の配給権をイザベル・ユペールが2003年に買取ったことなど、驚きの要素満載ではあるけれど、それらすべてを差し置いても魅力に溢れた作品
これから配信でも観られるようになるかもしれないけれど、これは劇場で観たかったし、久方振りにパンフレットまで購入してしまった
ザラザラした映像も一層この作品の雰囲気を盛り立てている(放置されていた本作のネガを映画財団とUCLAそしてGUCCIにより修復、と説明されていたけれど、オリジナルの画質はどれほど酷かったのだろう)
最後に、アメリカン・ニューシネマは終わり方が大事と思い込んでいるけれど、本作の終わり方には痺れてしまった
「ロックンロールはフェードアウトじゃダメだよ、カットアウトじゃなくちゃ」という名言を実践するロックな映画にふさわしい終わり方