引用元:uplink.co.jp
コロナ禍になってから飛躍的に鑑賞映画の本数が増えた
ひとつひとつの作品を楽しめてはいるけれど、正直なところ観終わってから反芻するまでの作品となると、その数は限られてしまう
本数が少なければ、自然に余韻に浸るけれど、ハイペース(3-4本)な週末には、観終わった直後に次の作品を観始めることも
それはそれで「楽しいシネマライフ」ではあるのだけれど、時々そんなペースを許さない、強烈なボディー・ブロウのような作品に出会うことがある
2017年のアメリカ映画
90歳になるひとり暮らしのラッキー(ハリー・ディーン・スタントン)の日課は、コーヒーを飲み、タバコを吸い、馴染みのダイナーやバーに出掛けて店員や常連客とたわいもない話に興じること
ある日自宅で倒れてしまい、かかりつけの医師に診てもらうと「身体には特に問題はない」と言われる
しかしそれを機に「死」を迎えることが現実的なものとして迫ってくる感覚がある中で、死を恐れ、或いは無視し、また死について考えながら日々を過ごすようになる
公開同年に亡くなったハリー・ディーン・スタントン(「パリ、テキサス」のトラヴィスを演じた)にとっての最後の作品
まさしく彼にとっての集大成だろう
ハリー・ディーン・スタントンをずっと観ているだけでも本作の存在意義は十分にあるけれど、他のキャストも映像も音楽も脚本もすべてがしみじみ美しく(?)圧倒される
観終わってしばらくは他の作品を観る気にならなかった
ラッキーが歌いだすシーンには思わず揺さぶられてしまったし、音楽の素晴らしさやスペイン語の奥ゆかしさ、乾杯の意味、友情が意味すること、衰えることへの不安、バーで飲むブラッディ・マリーの美味しさ、そして自分より長生きしているカメに逃げられた悲しさ等々、本作で描かれているシーンを振り返ってしまう
飼っていたカメに逃げられて落ち込む男を演じているのは、デヴィッド・リンチ
これから何度か観直すことになりそう