写真は渋谷ユーロスペース入り口
渋谷駅からユーロスペースに向かう文化村通りも、すっかり師走な様相
最近はインバウンドも増えてきて、一層騒がしくなってきた
その一方、館内は落ち着いた雰囲気で、他の人と隣り合わせることなく中央の席で鑑賞
浅草に実在する骨董屋「東京蛍堂」
店主の和郎(村上淳)は全国への買い付けもあったりなかったりで不在がち
店番は専らバイトのマコト(こだまたいち)に任されている
コロナ過での営業で客足も鈍い毎日ではあるけれど、仲見世の店主や町内会の人たち、そして骨董コレクターなどがちょくちょく店を訪れる
残暑の厳しいある日、何だか事情を抱えていそうなひとりの女性・真悠子(千國めぐみ)が店にやって来る
浅草寺や観光のついでに立ち寄った風でもなく、目的買いでもなさそうで、しばらく滞在しては帰って行き、また翌日もやって来る
「気になる物があったら知らせて」と、さり気なく声を掛けるも、真悠子の反応は薄く、増々マコトは彼女の存在が気になっていく
まるでドキュメンタリー映画の様に淡々としたシーンが続き、大きな出来事もなく、時間が贅沢に流れていく
登場人物は、みな穏やかなキャラクターながらも一癖あり、その癖を直そうとするでもなく正直に折り合いをつけながら(でも時々迷ったりしながら)暮らしている
下町浅草といえば、押しの強そうな(そしてクチの悪い)人物が登場しそうではあるけれど、本作にはそういう人は一切登場しない
最後の方にあるキスシーンは、話の流れ的にも、状況的にも、「そこでそうなる?」的な、必然性の無い感じなのに、妙なリアリティがあって、脳裏に刻み込まれてしまった
サウンドも映像も、輪郭のはっきりした、高いクウォリティを感じさせる作品