引用元:cinema-mode.com
笑ってスッキリする映画、癒される映画、泣ける映画、等々 楽しめる作品にはいろんなタイプがあるけれど、久しぶりにお腹にズシンと来る作品だった
アメリカのとある高校での銃乱射事件
原題の「MASS」というのも、銃乱射 = Mass Shooting / Random Shootingからだろう
多くの同級生を殺害した後、自らに向かっても発砲し、命を絶った加害者の生徒には、民衆やメディアの関心が集中し、彼の両親に対しても、「何故ここまで残忍な犯行に至ったのか」という、多くの非難と疑問が向けられた
その痛ましい事件から6年後、今でも犠牲となった息子の死を受け入れられずにいるペリー夫妻は、セラピストの勧めにより、加害者の両親と対面で会話をすることになる
指定された会場は、教会の建物の奥にある部屋
先にやってきたのはペリー夫妻
妻のゲイル(マーサ・プリンプトン)は、神経が高ぶり、会場に入る前に近くをドライブするよう夫にお願いしていた
夫のジェイ(ジェイソン・アイザックス)は、優しくゲイルを宥め、会場に向かう
それから間もなく、加害者の両親、リチャード(リード・バーニー)とリンダ(アン・ダウド)が登場、四人はぎこちない挨拶を交わした後、会話を始める
この時点で、「重い映画を観始めてしまったな、」という若干の後悔と、ならば受けて立とう(大袈裟な)という覚悟を持った
それに見合う濃密な内容だったせいか、ラストまで一瞬に感じられた111分
つい高圧的な態度に出てしまうゲイルに対し、謝罪の意を前面に出しつつも饒舌に主張するリンダ
感情的な妻たちを宥めながら、常識的に振舞おうと、理路整然と話そうとするジェイとリチャード
しかし、会話が進展し、核心に触れる毎に、自然とヒートアップし、セラピーどころか、「やっぱり来るんじゃなかった」という思いが、4人に浮かぶ
「自分が親だったら、(いくらセラピーとはいえ)こんな面会は絶対にしたくないし、逆効果にしかならない」
と思いながら観ていたけれど、その考えは観終わった後に見事に覆されていた
そしてその突破口は、体裁を意識した夫の理論ではなく、腹の底から湧き上がる妻の想いだった(事前に調べた細かい事や、用意してあった言葉が通用するような土俵ではないのだ)
こんな映画、何度も観ることはないだろうけれど、DVDを手元に持っておきたくて注文した
4人の俳優の、がっぷり四つが堪能できる、という意味では「おとなのけんか」を思い出す
この2作品の優れているのは、銃乱射や、子供のいじめといった「話し合いのきっかけとなったテーマ」だけではなく、親たちが普段どんな生活をし、何を大切にし、或いはしていないのか、といった姿が鮮明に浮かび上がってくるところ
いづれも、逃げ場のない密室劇で、特に本作の4人にはすっかり魅了されてしまった
(今後、彼らの出演作を追っていきたい)
リンダ役のアン・ダウドは、「コンプライアンス 服従の心理」で、犯人に翻弄される店長役を演じていた(彼女にオファーされる役柄の傾向がわかる気がする)
明日は、アイルランド問題を扱った作品を紹介します