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2000年公開のミュージカル映画
デンマーク他、計12か国の合作(独・英・仏・瑞・蘭・伊・諾・芬・亜・台・白)
「アンチが多く存在する」名作のひとつ
チェコからの移民として、アメリカで幼い息子ジーンと暮らすセルマ(ビョーク)
生活は苦しく、隣人で警官のビル(デヴィッド・モース)にトレーラーハウスを借りて住んでいる
昼間はプレス工場、夜は内職、そしてその合間を縫って大好きなミュージカルの稽古に勤しんでいる
生活費はギリギリまで切り詰め、息子の誕生日にも余計なものは買わないセルマ
周囲にはチェコのお父さんに仕送りをしていると話すも、実際にはクッキーの缶にお金を貯めている
その理由は、自らも遺伝により患っている、失明に至る病気の手術を、息子に受けさせるため
ところが、セルマの視力は日に日に衰え、工場での作業を行うための視力検査は、親友のキャシー(カトリーヌ・ドヌーヴ)の計らいで何とか誤魔化していたが、医師からは今年中に失明すると告知される
住んでいるトレーラーハウスに加え、息子の世話など何かと親切にしてくれる隣人のビルと妻のリンダ(カーラ・シーモア)は、親の遺産もあって裕福な暮らしをしている風だったが、現実にはリンダの浪費で遺産どころか銀行から借金をしていた
そのことをビルから打ち明けられたセルマは、彼を慰めるつもりで
「自分にも他人には言えない秘密がある」
と自身と息子の病について、そして彼の手術代を貯めていることを喋ってしまう
こんなミュージカルもあるのか、と思うほど重苦しいストーリー
その中で雰囲気が一転して明るく踊りだすのでもなく、重苦しい場面のまま歌と踊りが展開される何とも不思議な感覚
室内での会話時のシーンでは、まるで素人がハンディカメラで撮っているかのようなフラフラした映像
臨場感を引き出すことに成功しているけれど、ストーリーの重苦しさと映像のブレに何とも言えない居心地の悪さが続く
セルマにとって最悪の展開をしていく理由は、厳しく言えばセルマ本人に起因するもので、嘘までついて工場で働いたことで機械を壊したり、ミュージカルの降板も判断の遅さで迷惑を掛けてしまうし、それ以上に重要なところでもセルマが「譲れない」と意固地になることで、周囲に一層の迷惑をかけてしまう
しかしそれを「母親として間違っている」、「セルマの自己満足」と批評しても始まらない
一方で「理屈で片付かないところが人間」と、芸術作品的に本作を持ち上げることにも抵抗を感じる
道理に合わない強烈な苦みを噛み締めるしかない、苦痛の140分
一番好きな映画というのではないけれど、数ある映画の中でも、特別な存在意義のある作品
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