無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

778. めし

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引用元:amazon.co.jp

 

1951年の作品

 

林芙美子原作、成瀬巳喜男監督、川端康成監修、そして原節子上原謙主演という、何とも贅沢なラインナップ

 

林芙美子は本作執筆途中で急逝してしまったため、(結末をどう撮っても異論が出そうで)成瀬巳喜男はもちろん、脚本(田中澄江・井出俊郎)の方も大変だったろう

 

 

 

東京で恋愛結婚した初之輔(上原謙)と三千代(原節子

 

美男美女とあって、(まるで前々回レビューした「不完全なふたり」のように)周囲から冷やかされるくらい、幸せな夫婦生活を送っていると思われている

 

しかし、初之輔の仕事の関係で大阪に越してきて、慣れない暮らしの中で日々食事の用意と掃除洗濯に明け暮れる三千代は、相当の鬱憤を溜め込んでいた

 

初之輔の稼ぎは少なく、家計のやりくりに苦心しているものの、当の本人からは何の感謝どころか、会話さえほとんど無い味気ない毎日

 

そんな中、初之輔の姪の里子(島崎雪子)が突然東京からやってくる

 

 

本人は家出と称して、親に黙って自宅を出てきたものの、三千代が(里子がこちらに居ると)電報で知らせるという長閑さで、しばらく居候するつもりでいる

 

住人が増えてお米が足りるか心配な三千代に対して、姪の訪問を喜ぶ初之輔は、里子に小遣いをやったり、大阪観光に連れて行ったり

 

そんなふたりを見て、三千代はいっそう不満を募らせていく

 

 

 

小津作品の中では、他の出演者に比べても感情の起伏の少ない原節子が、本作では常に不満を抱え、しかもそれを表情に出してしまうのが実に新鮮

 

本作を小津安二郎はどう観たのだろう

 

これはこれで良し、と評価した気もするし、営業妨害(?)に感じた気もする

 

また、三千代の鬱憤を増幅させるように能天気な里子を演じている島崎雪子も印象的

 

お見合いの話が嫌で、東京を飛び出し、大阪で気ままに楽しんでいる里子を見て、「結婚したことも間違いだったのかも」とさえ思う不憫な三千代、そして何も考えていない初之輔

 

こうした作品が、特に女性の地位向上的なメッセージとして受け取られるわけでもなく、大衆娯楽作品として上映されていた当時の状況を想像すると、改めて映画という娯楽の本質について考えさせられる

 

 

1951年の大阪を舞台にした映画らしく、復興期の中之島や、大阪城近辺の風景なども観られる

 

 

明日は、二組の夫婦による、強烈な対話が繰り広げられるアメリカ映画をご紹介

 

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