公開中のホアキン・フェニックスの最新作
2021年のアメリカ映画
印象的な ↑ のモノクロのポスター(映画も全編モノクロ)を観て
「えっ? ホアキン・フェニックス?」
と思ってしまうくらい、ぽっちゃりに役作り
生意気な男の子に翻弄される、少しだらしない中年男性を演じている
その中年男性、ラジオ局で働くジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)は、妹のヴィヴ(ギャビー・ホフマン)から甥ジェシーの面倒を頼まれる
精神的に不安定な状態が続き入院している夫のケアに集中する必要があって、どうしても息子まで手が回らないという
仕事での移動もあるし、元々子供の相手が得意でもないジョニーは乗り気ではないものの、妹のお願いを断ることもできず渋々了承
幼いジェシーとのしばしの共同生活を始める
ホアキン・フェニックスが、男の子とロス、デトロイト、ニューヨーク、そしてニューオリンズで過ごす様子がモノクロ映像で観られるというだけで充分に楽しめる作品
両親に構ってもらえないことでフラストレーションを抱えたジェシーが、わざとジョニーが困るような行動や、ジョニーを試すような言動にでたりする様子に(わかってはいても)ついイライラしてしまう
お一人様がすっかり沁みついている普段のジョニーの生活は、効率的で自身がコントロールできているけれど、ジェシーが来てから予定通りにいかないことばかり
ジェシーはまったく責められない(もちろん妹もその夫も)ことを理解していながら、仕事の忙しさもあって、聞き分けの無いジェシーに声を荒げてしまうことも
そんなふたりがニューオリンズの空き地で叫びあうシーンが感動的
「ドライブ・マイ・カー」で、みさきの実家跡で家福と叫びあうシーンを思い出してしまった
オトナでさえ感情を吐き出す場所が必要なのに、幼い子供にそれ無しで平気なワケがないことをジョニーが感じ、それまでのイライラが嘘のように消えていく
そして並行して描かれるジョニーの仕事(各地で子供たちにインタビューする)から、ジェシーだけでなく、問題や悩みを抱えた子供がアメリカに如何に多く存在しているの伝わって来る
ホアキン・フェニックスが「ジョーカー」の次に出演する作品として選んだ本作は、アプローチは随分違う(前作ではエキセントリックなエンターテインメントで、本作で日常を淡々と)けれど、現代のアメリカ社会が抱える影の部分について、という意味では重なるものがある