引用元:filmarks.com
映画「ドライブ・マイ・カー」が話題になったお陰で、渋谷Bunkamuraにて濱口竜介監督の過去の作品が上映されている
折角の機会なので意を決して本作を鑑賞してきた
「意を決して」とは大袈裟な気もするけれど、何せ317分である
5時間と17分、、、個人的には「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」の236分、「夢の涯てまでも」の287分を越える、覚悟と(時間の)調整の必要な長さ
神戸に暮らしている四人の三十代後半の女性
堅物な学者の妻、純(川村りら)
専業主婦で中学生の男の息子を持つ桜子(菊地葉月)
看護師でバツイチのあかり(田中幸恵)
そして夫とも仕事で絡みのある学芸員の芙美(三原麻衣子)
中学生の時からの親友だった純と桜子
人と人をくっつけるのが得意な純によって、オトナになってから仲良くなったあかりと芙美
四人は互いに忙しい中、何とかやりくりしては時々集まっている
今回は生憎の天気の中、六甲の山へ
どしゃ降りで景色も見えない中で、持ち寄った食べ物をつまみながら「今度は泊りで有馬温泉に行きたいね」と日程を検討する
さすがにスグというわけにはいかず「8月の上旬に」ということになるも、芙美が
「その前に、来週末にあるちょっと変わったワークショップに来ない?」
と、自らが主宰する催しに三人を誘う
とにかく長時間なのであらすじを書くにもキリがないのだけれど、三人が参加したワークショップの打ち上げが本作の大きな起点になる
三十代後半は、仕事もプライベートも抱えるものが大きく、毎日忙しい
精神的にも大きく負荷がかかる時期で、とにかく余裕が無い
それに見合う評価なり感謝なり報酬があれば良いのだけれど、そうとも限らずそれぞれが不満を抱えてもいる
意味のない夫婦生活に見切りをつけて泥沼の離婚調停を続けていることを三人に言えない純
純からその話を打ち明けられ驚くも、自身の夫婦生活にも大いに疑問を感じ始めていた桜子
毎日患者さんと体当たりの激務をこなすあかりは、友人たちともいホンネでぶつかり合いたいし、嘘は許せないと思っている
そして理解のある夫と会話のある夫婦生活を送ってはいるけれど、何処か表面的なやりとりに終始する芙美
他の参加者も加わった打ち上げの中で、お互いの抱えていたものが爆発してしまう
収集のつかなくなった場は(観ているコチラが辛いくらいに)最悪の終わり方ではあったものの、心の奥底にあったものをぶつけ合った納得も同時に感じさせる
正直そこまでぶつかり合わなくても、とは思うけれど、堪えてばかりでは表面的でつまらない人生になってしまう、、、という葛藤の中でもがいていく四人の生き方を噛み締めるような作品
「ドライブ・マイ・カー」や「偶然と想像」を観てその世界に惹かれた人であれば、より濃厚な濱口ワールドが楽しめる、覚悟と調整に十分見合う作品