無人島シネマ

忘れてしまうには惜しい映画 および雑記

112. アゲイン 28年目の甲子園

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元高校球児の坂町(中井喜一)は46歳

 

結婚し娘にも恵まれたにもかかわらず、家族を顧みず仕事に没頭した結果、今はひとり暮らし

 

ある日、元チームメイトの松川の娘、美枝(波瑠)が自宅に訪ねて来て、大学生の彼女が今、スタッフとしてサポートしている(元高校球児が再び甲子園を目指す)「マスターズ甲子園」に出場しないかと持ち掛けてくる

 

娘にも出て行かれ精神的にも荒んでいる坂町は、最初はロクにとり合おうともせずに追い返すところだったが、美枝が松川の娘だと知ると(とりあえず他の卒業生に連絡してあげようと)話を聞く

 

美枝の父親の元チームメートたちを甲子園に連れて行きたい、という強い想いに触れるうちに、28年前のある事件について、当事者の娘である美枝に伝えなければならなくなる

 

 

 

キャッチボール屋  」と同じ様に、会話ではなくキャッチボールをしながら心を通わせる場面が心に響く

 

本作では「28年振りの熱い気持ち」だったり、「関係を壊してしまったことへの償い」だったり「取り戻せないものへの後悔」の気持ちを込めてボールを投げ込む

 

簡単には消せない負の感情を抱えながら生きていくことの辛さが伝わってくる

 

 

 

どんな心の傷も時間の経過が癒してくれるとは言うけれど、行動を起こさなければ癒えない傷もあるのだろうか?

 

勇気を振り絞って心底嫌われている娘に声を掛けたり、昔の過ちについて仲間に説明したり

 

長い間生きていると、(程度の差こそあれ)何かのきっかけを利用してこうした行動に出ることが必要になるのだろうか

 

きっかけに感謝して行動できる人、きっかけがあっても行動しないという選択をする人、そして迷っている間に機を逸してしまう人もいるだろう

 

何度も機を逸しながら歳を重ね老いていく中で、一度は重い腰を上げることがあるのかもしれない

 

こうしたところに重松清が描く人間臭さを感じる

 

先に映画の企画があり、2012年5月から2016年10月まで連載小説として掲載され、2015年1月に映画が公開された