
引用元:alpsnohashi.com
高校野球が好きで、全国大会である春と夏の甲子園をテレビ観戦するのはもちろん、その前の地方(西東京と神奈川の)予選を観に行ったりもする
いづれも激戦区だから、準々決勝以降はチケットが取れないほど混雑することも多いし、プロのスカウトが来ていたりもするけれど、一回戦や二回戦は在校生や父兄の他には「数十名の高校野球マニア」という長閑な状況
言い換えれば、父兄でもないのに、酷暑の中をわざわざ観に行くなんて、とも思う
毎日の猛練習に耐えてきた、グラウンドの高校球児たちにとっては、「負けたらおしまい」の状況
スタンドで観ている自分たちとのギャップに、時々申し訳ない気にもなってしまう
タイトルの「アルプススタンド」とは、甲子園球場の外野に近いエリアの内野席
白いシャツを着た人たちで埋められた、高く聳(そび)えるスタンドから、アルプスと呼ばれるようになったという
内野席の中では(角度的に)観辛いせいか、チケットが最も安く、高校野球の時には、応援団や吹奏楽、チアリーダーたちで占められる
本作は2020年の夏に公開された
身近な設定でもあるし、劇場で観たいなと思いながら、コロナの真っ只中ということもあって観逃してしまった
舞台は夏の甲子園
東入間高校は一回戦で強豪校と当たってしまう
在校生の応援席であるアルプススタンドは、熱心な応援団や吹奏楽の演奏で盛り上がっていた
空席の目立つ一番端の方では、同じ高校の演劇部員あすは(小野莉奈)とひかる(西本まりん)が並んで座っていたが、ふたりとも野球のルールに疎く、試合の展開がよく呑み込めないまま観戦していた
後ろには、宮下恵(中村守里)が手すりにもたれて立っていた
彼女は成績優秀ながら、人とうまく付き合えず、今日もひとりでいる
その成績も、今までずっと学年で一番だったのを、吹奏楽部の部長をしている智香(黒木ひかり)に抜かれてしまった
そこに元野球部員の藤野(平井亜門)がやってきて、あすはとひかるの近くの席に座る
あすはは、自身が書いた脚本の演劇を(ひかるがインフルエンザに罹ったことにより)大会で披露する機会を逃してしまい、ひかるはあすはや他の部員たちへの申し訳無さで、宮下恵は上手く心を開くことができない劣等感や成績で負けてしまったこと、藤野はエースの園田にはかなわないと野球を諦めてしまったこと
最初は、それぞれの後悔に理由をつけて自分を納得させたり、他人を批判したり
イニングの合間に、恵が智香とひと悶着あったり、恵とひかるが同じように園田のことを好きなことがわかったり、すべてが順調に見える智香も焦りや不安を抱えていることを知ったりする
ところが、グラウンドで必死にプレイするエースの園田や、控えの矢野に触発される形で次第に意識を変えていく
最後までカメラは、グラウンドを映すことなく終わる映画
観戦しているスタンドは、明らかに甲子園ではない(使用されたのは神奈川県にある平塚球場)のだから、無理なく地方大会という設定にすれば良かったのに
甲子園のチケットは、発売日に全試合即日完売するくらいだから、アルプスの端でもこんな長閑な雰囲気ではない
作品のデキが素晴らしいので、そこに拘る(タイトルにする)必要はまったく無いのに、妙なハリボテ感さえある
もしかしたらアニメを映画化したのかな?と思い調べたところ、最初は高校演劇として生まれた作品らしく、その後に全国の高校に波及し、映画化されたとのこと
高校三年生のカッコ悪さと可愛らしさが詰まった愛おしい作品
明日は、日本人だってストライキを起こすんだ、という映画をご紹介