無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

1071. 赤ちょうちん

引用元:amazon.co.jp

 

60年代までの作品と比較して、70年代の邦画には「絶対的な鑑賞数が足りない」感があって鑑賞

 

70年の東京近郊の様子が(若者の暮らしぶり以外にも)たっぷり観られる作品

 

 

都内の駐車場で働いている政行(高岡健二)は、街で知り合った少女幸枝(秋吉久美子)を「何もしないから」という約束で部屋に泊める

 

線路のすぐ脇にある部屋で、政行は電車が通る度に轟音と振動に悩まされていたけれど、幸枝はスヤスヤと眠っていた

 

翌朝、部屋を出て行った幸枝だったが、実家の祖母に送るつもりの現金書留を枕元に忘れたことを思い出し、政行の部屋に戻ってくる

 

ところが職場の同僚の修(河原崎長一郎)と出かけた競馬で、有金だけでなくポケットにねじ込んでいた幸枝の金までも使いきっていた政行は、戻ってきた幸枝に詫び、それから一緒に暮らし始める

 

 

 

 

ふたりは、政行が5年住んだ線路沿いの部屋を出て、それから実に4回も引っ越しをすることになる

 

最初は (1) 幡ヶ谷にあるアパート

 

以前に比べて断然静かなのか良いけれど、火葬場が近くにあり、政行が夜勤の間にひとりで過ごすのを幸枝が嫌がる

 

次は (2) 新宿柏木のアパートに、隣の隣の部屋に同僚の修が恋人利代子(横山リエ)と住んでいることもあって引っ越す

 

当初は仲間が近くにいる都心の住まいを気に入っていたふたりだったが、幸枝が妊娠したこと、そして政行の不誠実な対応によって不安定な状態になったことで再び引っ越しを決意する

 

今度は単身者向けアパートではなく、(3) 郊外にある家族向け住宅に引っ越す

 

生まれたばかりの赤ん坊と、三人で落ち着いて暮らそうと考えていたふたりだったが、そこには少し気味の悪い大家さん(樹木希林)がおり、新品同様のベビーカーを譲ろうとしたり、やたらと赤ん坊に近づこうとするのだった 

 

後にこの大家さんが、自分の子供を産後すぐに過失で失ってしまったことを知ったふたりは、気味が悪いと退去することに

 

そして今度は破格の条件で (4) 葛飾区にある一軒家風(長屋)の家に移る

 

隣に住む松崎家は、引っ越し荷物の移動を手伝ってくれたり、(引っ越すために)仕事を辞めた政行に工場の仕事を斡旋してくれたりと面倒見は良いのだけれど、妻の文子は度が過ぎたお喋り好きで、ふたり(特に幸枝)を閉口させる

 

 

このお喋り好きな妻の印象が強烈過ぎて(夢に出てきそう)調べてみると、南風洋子という女優で、元宝塚(有馬稲子と同期)だった

 

何となく竹原芳子(旧芸名どんぐり)にも通じる怖さもあるけれど、すごく知性的な人なのではと思わせる表情もあって、これから注目して出演作を観ようと思う

 

 

ちなみにタイトルの赤ちょうちんについては、映画の中にそれらしいシーンもなく、かぐや姫の同名曲を差し込むためなのだろう(今で言うタイアップというよりも、曲からの派生という印象)

 

歌詞にある「生きてることは、唯それだけで哀しいことだと知りました」というフレーズが本作のテーマだとすると、意外でありショッキングな本作の結末の受け止め方も、少しは前向きに出来るような気もする

 

 

明日は、マイケル・ケインの出演作を紹介します

 

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