無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

766. たちあがる女

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引用元:eiga.com

 

2018年のアイスランド・フランス・ウクライナ映画

 

英題は「A Woman at War」

 

最初は邦題のイメージからシャーリーズ・セロンフランシス・マクドーマンドの「スタンドアップ」的な内容を想像していたけれど、観始めると暴力的なまでに正義に突き進む中年女性の様子から(同じくフランシス・マクドーマンドの)「スリー・ビルボード」の方が近い印象に

 

そして観終わった時にはもっと奥行きのあるバランスのとれた完成度の高さを感じさせた作品

 

 

 

 

アイスランドの小さな町で聖歌隊の講師をしているハットラ

 

ネルソン・マンデラとマハトマ・ガンディーを崇拝し、プールで泳いだり自然の中で過ごしたりすることを好むこの独身の中年女性には、隠されたもうひとつの顔があった

 

それはアンダーグラウンドで過激な環境保護団体のメンバーとしてのもの

 

団体の中でも彼女は単独でより過激な行動を繰り返し、仲間からも「逮捕されてしまっては元も子もない これ以上は危険だ」と注意を受けていたというのに、国際企業のアルミニウム工場の電線を切断し操業を停止させるという行為に出る

 

工場の被害は大きなニュースとして扱われるも、そんなハットラのところに養子縁組の申請が受理されたとの知らせが入る

 

それは4年も前に彼女自身が申請したもので、その事実を彼女はすっかり忘れていた彼女は念願が叶うことに喜びを隠せないでいた

 

しかし最終的な審査には「逮捕歴が無いこと」も条件になるため、果たしてこの話を引き受けて良いものか決めかねていたハットラではあったものの(受け入れ予定の)ウクライナの紛争で両親を亡くした女の子ニーカの写真を見てから決心が固まっていく

 

 

 

前述の「バランスのとれた」というのも、ハットラの独善的なまでの正義の追及とアイスランド大自然、そして長閑にも聴こえる生演奏(とウクライナの民族衣装を纏った合唱隊)に依るところが大きい

 

時々、シーンの中に演者と同じように存在しハットラの心情を代弁する形で演奏するも、演者からは見えない存在、という設定

 

ストーリーに集中する邪魔になるかも、、と最初は懸念しながらも、途中からその味わい深さに気づき、終盤にはすっかり気に入ってしまっていた

 

話の展開や主人公の行動に深く同意できるわけでもないし、バランスといっても一般的な映画で押さえられているポイントとはズレているし、正直なところ好みの大きく分かれる作品だと思う

 

しかし環境汚染や破壊行為、人種差別や紛争など、扱いにくいテーマをスマートかつコミカルにストーリーに織り込むことに成功している

 

 

ジョディ・フォスターの監督・主演でハリウッド・リメイクされることが決定しているけれど、アイスランドならではの要素が多いところをどう料理するのかお手並み拝見

 

 

 

明日は、おバカなアメリカ映画をご紹介