引用元:filmarks.com
1996年のアメリカ映画
公開から27年経つけれど、ある意味理想的な観られ方をしている作品ではないだろうか
多くの映画ファンに観られていて、「名作」というよりも「映画好きな友だちに推薦したい作品」という印象
コーエン兄弟の作品の中でも最も成功しているのも納得のクウォリティ、そして彼らの作品の割には奇をてらった要素が控え目(失礼!)なのも幅広く支持されている要因だろう
そして冒頭の数分しか撮られていないのに「ファーゴ」という地名をタイトルにしたのも勝因のひとつだと思う
知らない地名なのに、或いは地名か否かもわからないのに不思議と
「観てみたいな」
と思わせるのは何故だろうか?
ミネソタとノースダコタの州境にあって、本作の舞台となるミネアポリスに住む人が(もし犯罪計画の打ち合わせをするなら)集合場所に選びそうな距離にある街ではある
それにしてもファーゴという街には他に強くアピールできるものも無いだろうし、本作のイメージだけで知られているとしたら、住民に同情するしかない
1987年のミネアポリス
義理の父が経営する自動車ディーラー会社の営業部長をしているジェリー(ウィリアム・H・メイシー)は働きぶりも今ひとつ
顧客からも義父からも信用を得られず、また高額な借金を抱えてもいた
この状況を打開しようと、妻を狂言誘拐させ、義父から8万ドルの身代金をせしめて誘拐犯と分け前を折半する計画を思いついたジェリーは、ファーゴにあるレストランで二人組の男と待ち合わせ、誘拐計画を説明し協力を求める
ところが、男たちはいづれも短気で乱暴なところが災いし、ちょっとしたミスから計画は大きく狂い始める
ともすれば「犯罪計画が大きく狂ってしまう」というよくある作品で終わってしまう可能性もあるところを、捜査を担当する警察署長のマージを演じるフランシス・マクドーマンドの演技が、本作を特別なものにしている
対比をうまく表現するのがコーエン兄弟作品の特徴だけど、本作では署長とはいえ田舎町をパトロールするだけの、家事と仕事を両立させているベテランの婦警さん
とびきり優秀な人ではないかもしれないけれど、きっと世の中の常識をわきまえたオトナとして描かれている彼女が
「なんで、こんな犯罪をしてしまうの?」
と、嘆くでもなく呆れるでもなく素でつぶやくことで
狂言誘拐という異常な行動との対比を成している
フランシス・マクドーマンドは「ミシシッピー・バーニング」(1988)から本作を経て「スリー・ビルボード」(2017)という三作だけとってみても良い感じにキャリアを積んでいるように見える
加えて、狂言誘拐を依頼するウィリアム・H・メイシー、また二人組の男のひとり、ゲアを演じているピーター・ストーメア(本作中、複数の登場人物から特徴を「変な顔」と言われていて可哀想だった)の演技もよく効いている