無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

765. そして父になる

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引用元:amazon.co.jp

 

2013年の作品

 

凶悪」のレビューにも書いたけれど、同年公開された二作品を劇場で鑑賞した

 

どちらもリリー・フランキーの主演だったこともあって、彼の演技としては「凶悪」の方が良いなという印象ながら、作品全体では甲乙付け難いくらいどちらも印象に残った

 

是枝作品だけに、インパクトというよりも「やり場のない想いを抱えた人」の描かれ方にウンウン唸って観ていたけれど、カンヌ国際映画祭で審査員賞を獲ったこともあってかフランスでもヒットした模様

 

確かにルールと感情の間で揺れ動く本作は、むしろフランス向きな映画かもしれないとさえ思う

 

或いは「人生は長く静かな河」という、看護婦が(妻が亡くなっても自分を後妻に迎えてくれない医者に腹を立て)子供をわざと取り違える1988年のフランス映画を思い出させるのかもしれない

 

 

 

 

優秀な建築家として、多忙な毎日を送っている野々宮(福山雅治

 

ひとり息子で6才になる慶多の、有名私立中学への合格も決まり、妻のみどり(尾野真千子)と祝福のひとときを過ごしていた

 

そんな折、息子が生まれた前橋市の病院から「重要な話がある」と呼び出される

 

曰く、息子と同時期に当院で出産した別の夫婦が小学校入学に向けて血液検査をしたところ(血液型が)両親と一致せず、病院で調査した結果「子供の取り違えがあった」ことが判明したという

 

そして野々宮夫妻の本当の子供は慶多ではなく、斉木家で育てている男の子だと

 

驚きの事実に、もともと地方での出産に反対だった野々宮は「なぜ分からなかった?」とみどりを責める

 

 

しかし病院からのアドバイスもあり、いつまでも結論を引き延ばすこともできないと考えた野々宮は、群馬で小さな電気店を営んでいるという斉木家を訪ねる

 

そして病院を起訴する準備を進めると同時に、野々宮は弁護士を頼りに「ふたりとも引き取る」方法はないか探り始める

 

 

 

 

取り違えに対して「このまま」か「子供の交換」か、という重大な決断を迫られるけれど、その局面において「どういう考えでどちらを選択するのか」そしてその判断が瞬時のものなのか或いは時間を置いて辿り着いたものなのか、またそれが夫婦間で異なる場合に相手の考えを尊重できるのか等々、いろいろと考えさせられる

 

特に妻の場合(自分と違って)自身のお腹を痛めていない夫の意見を自分の主張と同等に扱えるのかは疑問だし、そこに執着してしまうと本筋を見誤ってしまうかもしれず、そもそも「本筋って何?」となるとキリがない

 

夫婦だからどんな難しい話でも(ほぼ同じ価値観を持ちながら)解決できる、という部分もあるのかもしれないけれど、思いも寄らないこうした難題の前には意外な相手の考えに驚かされたり失望したりもすることもあるだろう

 

いづれにしても自分の人間としての強さを試されているような気分になりそう

 

 

明日は、アイスランド・フランス・ウクライナ映画をご紹介