引用元:amazon.co.jp
2004年のアメリカ映画
監督は「愛と青春の旅立ち」のテイラー・ハックフォード
劇場公開時に観て以来、久し振りに鑑賞
公開当時は、ストーリー云々よりも
「好きなソウルシンガーの生涯に触れたい」
という理由で観に行ったけれど、今回はひとりの男性が抱えていた障害や、肌の色による差別、薬物や家族の問題を噛みしめる様に鑑賞した
時は1948年、フロリダ州グリーンヴィル
幼い頃に緑内障で失明してしまった少年レイ(ジェイミー・フォックス)は、盲学校で学んだ後、音楽で身を立てようとフロリダからシアトルに向かっていた
付き添い無しで長距離バスに乗ろうとしたところ、運転手から暴言を吐かれる
当時はバスの中でも、途中寄るレストランでも肌の色で席が隔離されていた時代
シアトルのバーで、シンガーとしての才能を発揮し脚光を浴び始めるも、周囲の扱いは酷く、マネージャーからもギャラを胡麻化されてしまう
南部から来た田舎者であること、黒人であること、また盲であること、、、様々なハンデを抱えながらも、レイは母親から強くなるよう躾けられた通り、時には強硬に権利を主張していく
才能が認められ、念願のアトランティック・レコードと契約しレコーディングするも、当初は「ネット・キング・コールのモノマネ」と言われてしまう
そんな状況を打開しようと、アトランティックの社長であり創設者のアーメットが、自作の「Mess Around」をスタジオでレイに披露していると、曲の途中でレイが続きを即興で歌い始める
そして、この最高にグルーヴィな曲が、レイの人生を変える大ヒットになる
ゴスペルとソウルを融合させた(神聖な教会音楽と邪悪な大衆音楽を一緒にするのは不謹慎だと当時問題にもなった)名曲「I Got a Woman」もヒット、ゴスペル・シンガーのデラ・ビー(ケリー・ワシントン)と結婚し長男も生まれ、レイは幸せの絶頂に
しかし、この頃からシアトルで覚えた薬物によって(幼い頃、弟が誤って熱湯の中で溺死してしまったトラウマなのか)水に浸かる幻覚を経験したり、親身に注意してくれる身内にも酷い言葉で罵倒するようになってしまう
バック・シンガーのマージー(レジーナ・キング)との愛人関係も絶ち切れず、デラ・ビーの心は離れてしまうも、その後もヒットには恵まれ、育ててもらったアトランティックを離れ、大手のABCに(巨額のアドバンテージとマスターテープの権利を含んだ契約を勝ち取り)移籍する
そして南部ツアー中、訪れた故郷ジョージアで、ある騒動に巻き込まれてしまう
ジュリアード卒のジェイミー・フォックスは、レイ・チャールズ役を見事に演じ切ってアカデミー主演男優賞に輝いている
10代の頃からソウルを聴いてきたけれど、レイ・チャールズは良くも悪くも「別枠」だった
好きな曲も多く、ヴォーカルもピアノも素晴らしいけれど、当時のソウル入門者の耳にはどうにも「スタンダード臭」がキツかった
オーティス・レディングや、ウィルソン・ピケットと比べると「自分のお気に入り」というよりはレジェンド的(ソウルの教科書に載っているかのよう)な存在
時代でもあるけれど、アルバムというよりは曲単位でアピールするアーティストということもあって、深堀りし辛いところもあった
今回、冷静に本作を鑑賞したことで、如何に「What'd I Say」が前衛的だったか、そして当時のレイ・チャールズが特別な影響力を持っていたを再認識
後半、ドラッグや荒れた生活から立ち直る過程が簡略化され過ぎな気もするけれど、エンタメ作品としては良いバランスだと思う
レイ・チャールズは、同年(公開を目前にして)肝臓がんで亡くなっている