ユーロスペースにて鑑賞
観客は数名(5-6人)だった
2018年からフランス全土で起こった「黄色いベスト運動」のドキュメンタリー
参加した人々の暮らしぶりや、家族を描いているのかと想像していたけれど、100%警察とデモ参加者間の「暴力の是非」についての議論
清々しいほどにテーマが絞られていた(中途半端な作品になることを防ぐのに成功している)
社会学者や大学教授、ソーシャル・ワーカーや主婦など様々な人が、現場で録画された(主に警官が暴力を振るう)映像を見ながら意見を述べていく
単純に暴力の是非を述べる人もいれば、民主主義と国家権力について言及する人、怪我を負った自身や身内について語る人など
観ていて辛かった
お金を払って映画を楽しむというよりも、「観ておかなきゃ」という義務感のみで最後まで鑑賞
「デモ参加者と警察」という意味では「Blue Island 憂鬱之島」を連想させるけれど、今回はそこまで民衆側の気持ちになれなかった
もちろん警察には大きな、そして根深い問題がある(大義名分による過剰な実力行使や、それを生む体質、またその自認と学習の欠如など)し、警察側がほとんど録画していないことも無策というか、愚かだと思う
それでもデモ参加者が投石したこと、商店を破壊したことは事実であって、同じ日に同じ場所にいて、警官から再三の警告を受けても立ち去らない人の「俺はそんなことしていないのに何故威嚇するんだ?」という主張は詭弁にしか聞こえない
そして(誰一人こういう意見は無かったけれど)、どちらの側にも潜在的な「やってしまえ」という暴力を楽しもうとする気持ちがある様に感じられた
人権の母国というフランスではあるけれど、お互いが好き放題に暴れ、その正当性を延々と語る様子を見ていると、とても21世紀の人間の姿には見えなかった
お互いが自由に主張できる環境があることは素晴らしいけれど、その中身はあまりに残念なもの
黄色いベスト運動の最中にフランスを訪問したプーチンが
「招かれておいてこんなこと言うのも気が引けるけれど、、」
とフランス警察の対応をマクロンに向かって非難するシーンが印象的
そしてマクロンは
「フランスには互いに主張をぶつけられる自由がある」
と、堂々と負け惜しみで応酬する
「中学生の口喧嘩か?」
と言いたくなるけれど、これくらい緊張感のある会話を日本のトップにも期待したいとも思う