どういった話なのかはタイトルから想像がつくし、こういう「将来の不安を煽る」タイプのエンタメ作品はあまり好きではないので、観るつもりはなかった
ところが、いくつかのレビューを途中まで読んでみると
「もしかしたら観るべきなのでは?」と思えてきた
観る気が無いのなら、そもそもレビューを最後まで読むだろうに、、、どの映画を観るのかは「ちょっとした予感」だったり縁だったりだなあ、と
反対に、観る気満々でアルバムを聴き返したりしていた「エルヴィス」は、今回スルーしてしまいそう
単純に劇場に足を運べる回数が限られていることもあるけれど、予習とばかりに1970年の「エルヴィス・オン・ステージ」を堪能したせいでお腹が満たされてしまった、、、「リコリス・ピザ」も観に行きたいし
タイトルの「PLAN75」とは、75歳に達した国民は誰でも安楽死を選択することができる制度
如何にもなネーミングや、申し込みを促す広告が何とも腹立たしい
そして誘導する側が完全な悪として描かれていないところに恐ろしさを感じる
彼らは国民を騙しているわけでもなく、国民も「プログラムの仕組みを理解した上で」申し込んでいる
それくらい思い残すことも無いし、だれにも迷惑をかけたくないし、残りの人生を過ごす意味(価値)が無い、と感じている
ホテルの清掃員として働くミチ(倍賞千恵子)は、78歳
ある日、会社から突然解雇を通告され、夫とも死別している彼女は途方に暮れ、政府の提案する「PLAN 75」の申請を考えるようになる
またミチたちの申請を受け付ける役所のスタッフたちも、自分たちの仕事について疑問を持ち始める
先述の「将来の不安を煽る」タイプの作品は、行き過ぎた演出や話の展開がコミカルな領域にまで進行するのが常だけれど、本作ではそうした気配を醸すことなく倍賞千恵子を中心に演じ切っているところが一線を画している
ここが徹底されていた分、悪趣味にも悪ふざけにも不謹慎にも感じられなかった
しかし、その分観ている間ずっと居心地が悪かった
娯楽映画を観ている感覚には程遠く、「何故こんな不快感を抱えながら観なきゃいけないのか?」と
席の約半分を高齢者が占めていたことからも、冷やかし感覚で本作が選ばれているのではないだろう
劇場で観る必要がある内容とは思わないけれど、記憶に留めておくという意味では(劇場で観られて)良かった
エルヴィスは予習が仇になってしまったけれど、本作の予習がてら観た「男はつらいよ」(1969年のシリーズ第一弾)の中で、結婚をするさくら(倍賞千恵子)が都内の大企業でキーパンチャーとして颯爽と仕事をこなす姿、そして家族や会社やご近所(ご近所という言葉が示す広さも現在の数倍はあるのだろう)など、常に複数の人と接しながら生活している様に、嫌でも53年という時の長さを感じてしまうし、その間に変化したひとつひとつについてもぼんやり考えてしまう