2021年のアメリカ・カナダ・フランス映画
自宅から徒歩で行ける映画館で上映されるのは「お子様向け」の作品ばかりだと思っていたけれど、アダム・ドライバー主演の「ハウス・オブ・グッチ」も上演していた
なるべく電車は避けたい状況とあって、地元で観られて良かった(近日中にレビューします)
この町で漁師として働いているフランクと妻のジャッキー、兄のレオと妹のルビー
彼ら家族はルビーを除いて全員生まれつき耳が聞こえない
高校生のルビーは小さなころからずっと彼らの専属通訳、そして漁にも作業員兼安全係として付き添い、自由な時間が持てないでいる
学校で家族をネタにされたり「魚臭い」と揶揄われることも
これといった趣味も特技もないけれど、海に出ている時に大声で歌を歌うことが大好きなルビーは、新学期になり所属クラブを決めるのに合唱クラブに入ることにする
かなりクセのあるヴィラロボス先生にも認められ、選ばれたデュエットのパートナーとも息が合い始めたルビーだったが、合唱の練習に行こうとする度に家族から引き留められてしまう
ルビーを演じたエミリア・ジョーンズの歌声にすっかり魅了されてしまった
恋愛モノ、或いは家族愛の映画ではあるけれど、音楽(特にソウルミュージック)が好きな人にはオススメ
マーヴィン・ゲイ&タミ・テレルの「You're All I Need To Get By」やエタ・ジェームスの「Something Got A Hold On Me」などの選曲の素晴らしさに、この合唱クラブに加入したくなる
エミリア・ジョーンズは「海賊じいちゃんの贈りもの」に幼い娘役で出演していたのを観たことがあるけれど、まさかこんな魅力的な女優になる(そしてこんなに歌が上手い)なんて思わなかった
ずっと家族の犠牲になっていたルビーが掴みかけたチャンス
ついに大きく羽ばたけると思った時に、彼女の足にしがみついたのはまさかの母親
もちろん頼りたい気持ちは理解できるけれど、親としてどうするべきなのか(生まれつきの環境が影響して正解が見えない)そして健聴者の娘に対する複雑な感情を吐露する場面には胸が締め付けられる
日常の下品なジョーク、仕事への誇りと不安、頼りっ放しの娘に対する卑屈な想い、漁業組合への怒り、そのすべてがリアル
彼らが何を考え、どう思い、どう行動するのか、いろんなエピソードや撮影技術を駆使して訴えかけてくる
こうした作品を沢山観てきた中で、感動のシーンがありながらも(障害の描き方に)複雑な心境になることも時々あるけれど、本作は素直に素晴らしいと思えた
冒頭で書いた「ハウス・オブ・グッチ」を観るのに時間が余ったから急遽観ることにした作品だったけれど、思わぬ感動