引用元:natalie.mu
学生の頃、「最近のヒット作も、過去の名作も観まくるぞ!」とばかりに、映画のガイドブックを二冊購入した
メインで使ったのは(☆の数での評価はあるものの)、客観的に羅列してあるもので、もう一方は、ベテラン映画評論家による座談会的な会話の記録や、彼らの(かなり偏った 思い入れたっぷりの)ランキングが載っていた
そして、後者の中で圧倒的な支持を得ていたのが本作
「本作を観ずして、」的な物言いに過剰なものを感じ、「絶対に観るまい」と決めて、今まで生きてきたけれど(←大袈裟)、さすがにもうどうでも良くなったこともあって、このタイミングで鑑賞
原題は「Les enfants du Paradis」(=楽園の子供たち)
二部構成(第一部「犯罪大通り」、第二部「白い男」)になっている
19世紀半ばのパリ、劇場が立ち並ぶ「犯罪大通り」が舞台
威圧的な父親に辟易していたパントマイム師のバチスト(ジャン=ルイ・バロー)、プレイボーイの俳優フレデリック(ピエール・ブラッスール)、そして富豪のモントレー伯爵(ルイ・サルー)は、ガランスという名の美しい女性(アルレッティ)に惹かれていた
フレデリックは言葉巧みに、モントレー伯爵は自身の財産を背景に積極的なアピールをする
口下手なバチストも彼なりに熱い思いを告げるも、ガランスは誰にもなびかない
そんなガランスだったが、警察からあらぬ疑いを掛けられ窮地に陥る
(第二部)
数年後、ガランスは伯爵と生活を共にしていた
警察の厳しい追及から逃れるために伯爵に助けを求めたが、ガランスは彼に心を許すことはなく、伯爵も満たされない毎日を送っていた
一方のバチストは、看板俳優に成長し、長年彼を想い続けてくれた座長の娘ナタリー(マリア・カザレス)と結婚、二人の間には子供も生まれていた
ある日、バチストは自分の舞台をガランスが毎晩観に来ていることを知らされる
公開年度は本国フランスでは1945年、日本では1952年
戦後数年経ってこの作品を観た人は、(当時の日本の状況と)ここまで大掛かりなセット、人員、費用を娯楽映画の為に使ったフランスとの差を痛感したことだろう(ナチス占領下で、いったい誰がスポンサーになったのだろうか?)
もし学生の時に観ていたら素直に感動したのか、或いは「古臭くてよくわからん」で終わったのか
舞台上のシーンも多いので、ストーリーを追うような鑑賞ではなく、演劇の内容とのリンクや、それぞれの演者の心理なども想像しながらの、包括的な鑑賞が楽しめる作品という面では、映画だけでなく音楽や美術などからも、昔のパリが如何に華やかだったのかを(多少は)知ったタイミングで観られたのは良かったと思う