無人島シネマ

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189. 左利きの女

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引用元:filmarks.com

 

世界の人口のうち左利きの割合は約10%で、日本は約11%という

 

アメリカはかなり低くて1.8%、イタリア5.8%、台湾3%

 

幼い頃に右利きに矯正(という単語が適切なのかはさておき)する習慣があれば比率に影響するだろうから、例えば戦前の日本の割合はもっと低かったのかもしれない

 

かく言う自分も左利きではあるけれど、母親から「集団生活をする上で迷惑がかかるから」と字を書くのと箸を持つのは右手を使わされた

 

今では字を書くことも減ってはいるけれどペンと箸(それとなぜかギター)は右手、それ以外はすべて左手を使っている

 

とはいえ角度によってはハサミを右手に持ったり、用紙の右端に絵を描くのには右手を使ったりと、状況次第なので両利きに近いのかもしれない

 

左手で字を書くことも両手で同時に書くこともできるし、同時に(左は左右反転した文字を)書くこともできる反面、箸の持ち方は大人になって久しい今でも不格好でかしこまった席では意識するようにはしているけれどコンプレックスではある

 

 

 

1977年、西ドイツの映画

 

原作、脚本、監督はペーター・ハントケ

 

「まわり道」、「ベルリン・天使の詩」の脚本も務めた(「まわり道」は原作も)こともあり、ヴィム・ヴェンダースとはその後、仲違いをするまではお互いに影響し合う仲だったらしい

 

本作での小津映画へのオマージュというかその影響の大きさを見れば、当時如何にヴィム・ヴェンダースと親しくしていたのかがよくわかる

 

カメラのアングルや抑揚のない台詞回しなど直接的な影響(そもそも部屋にポスター飾ってる)から人間関係の描き方まで、熱心に小津作品を研究したんだろうなあ、と想像させる

 

映画が本職ではないハントケだからこそ(ヴィム・ヴェンダースの制作陣を借りて)ここまでストレートに小津映画へのオマージュを表現できたのかもしれない(或いは自身の作品でここまで表現するのは躊躇われると感じたヴィム・ヴェンダースが誘導したのかも?)

 

 

 

 

夫と別れて息子とふたりで生きて行こうとする妻の、新しい生活への決意を描いている

 

長い出張から帰ってきた夫に離婚を切り出し、自らは翻訳の仕事で生計を立てて行くと告げる

 

暫くして夫に激しく罵倒されるも言い返さずに堪える姿に、妻の決心の強さが見られる

 

 

彼女の周囲にいる人たちはみな善い人で、一人で新生活を送ろうとしている彼女を何とかしてサポートしようとするけれど、彼女は煮え切らない態度でやりすごしてしまう

 

これからの自身の生活の心配よりも、独りになりたい気持ちが勝っているかのようで、彼女の心の中に息子がどれくらい存在しているのか観ていて不安になってしまう

 

そういう気持ちを周囲に説明しないで、周囲が(悪い感情を抱くことなく)彼女にまとわりつくのを諦めてくれる(晴れて孤独になれる)までじっと待っている

 

 

今ここにいるのに、自分にふさわしい場所が無いなどと嘆くべきではない

 

というメッセージが繰り返される

 

 

原題は「Die linkshändige Frau

 

ドイツ語はわからないけれど翻訳ソフトによると邦題は直訳らしい

 

特に女性が左利きであることがストーリーの中で意味を持つわけではないけれど何となく気になるタイトルではある

 

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