無人島シネマ

忘れてしまうには惜しい映画 および雑記

137. 黄昏

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1981年の作品

 

原題は「On Golden Pond」 

 

黄昏時に夕日を浴びて黄金色に輝く湖面を、人生の黄昏時を迎えた老夫婦に重ねた邦題だろうか

 

 

実際に撮影が行われたのは、ニューハンプシャー州のSquam Lake

 

ニューハンプシャー州の真ん中辺りだから大自然に囲まれているのだろう、本作中に観られる風景も実に美しい

 

 

ニューイングランド地方の別荘に暮らす老夫婦、妻エセル(キャサリン・ヘップバーン)は、明るく社交的な一方、夫のノーマン(ヘンリー・フォンダ)は毒舌で他人を言い負かすことが大好きな変わり者

 

ひとり娘のチェルシージェーン・フォンダ)は幼い頃から、この偏屈な父にコンプレックスになるほど苦しめられ、憎んできた

 

チェルシーは、何年も両親の元に近づかなかったが、再婚相手を紹介するために、息子も連れ三人で(余命そう長くはないだろう父親との関係をできれば修復したいという淡い望みを抱えて)別荘を訪れる

 

 

娘役を演じたジェーン・フォンダにとっては、「憎み続けてきた父親との関係修復」という現実の彼女自身にも重なる内容

 

自ら映画化の権利を得て、娘役を演じ、父親を出演させ、母親役に(その時点でアカデミーの主演女優賞を最多となる三度受賞している)キャサリン・ヘップバーンを推薦するという熱の入れよう

 

父親のヘンリー・フォンダは果たしてどういう気持ちで受け止めたのだろうか?

 

 

気難しいというレベルを越えて家族に迷惑をかけてきた父親に対して、ずっと傍にいる母親は、絶妙に宥めたりしながらうまく付き合っていく

 

そして娘は(結婚相手として自らが父を選んだ母親とは違い)幼い頃からマウンティングされてきたトラウマもあって、上手な付き合い方を見つけられないまま成人し、自然な流れとして疎遠になる

 

改めるべきは、もちろん偏屈な父親の方だけど、こういう性格が老いてから治ることなど無可能に近く、(口で言うほど悪気はないとはいえ)久しぶりに会いに来た娘や孫に対しても憎まれ口しか叩けない父親にどう接すればいいのか?

 

いろんな思いを抱えながらも、仲直りしようとする娘の姿に心打たれる

 

高齢な相手のダメな部分とうまく付き合うということは(諦める覚悟を伴う残酷な対応にも思えるけれど)大事な優しさなのだろう

 

しかしその匙加減は誰も教えてくれない

 

 

 

ヘンリー・フォンダは、それまで「怒りの葡萄」でアカデミー主演男優賞にノミネート、「十二人の怒れる男」で作品賞という受賞歴はあるものの、輝かしいキャリアの割に「主演男優賞」には縁がなかった

 

娘がセッティングしてくれた生涯最後の出演となった本作でその悲願を達成し、受賞から5か月後に亡くなっている