無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

1165. 浮き雲

引用元:filmarks.com

 

タイトルから、成瀬巳喜男の「浮雲」を連想させるけれど、こちらはフィンランド映画

 

原題は「Kauas pilvet karkaavat」(グーグル翻訳によれば「遥か彼方に流れる雲」)

 

 

 

大好きなアキ・カウリスマキ監督の「フィンランド敗者三部作」の第一弾

 

ちなみに第二弾は「過去のない男」、第三弾は「街のあかり」

 

 

敗者の背景を少しまじめにまとめておくと

 

 

フィンランドは、今でこそ世界幸福度ランキングのトップに輝く国ではあるけれど、90年代に厳しい不況を経験した

 

80年代はその前のバブルの様な状況で、金融自由化による景気の上昇が続き、GDPは1990年にピークに達する

 

そこから93年にかけて失速、GDPは4年間で14%以上落ちた

 

1980年以降、日本で最も大幅に下落したのは、2007年から2009年辺りのいわゆるリーマン・ショックの時期で、下落幅として7%未満だから、フィンランドの不況はその倍以上の厳しさということになる

 

銀行は緩かった融資の基準を見直し、数多くの会社が資金難に陥り倒産した

 

またソビエト連邦崩壊によってフィンランドの輸出が激減したことにより、貿易赤字にもなり、ユーロ加盟後に徐々に景気回復する90年代後半まで、苦しい時代が続いた

 

 

 

ヘルシンキに住む夫婦、夫のラウリ(カリ・ヴァーナネン)は市電の運転手として、妻のイロナ(カティ・オウティネン)は、フィンランドの伝統的なスタイルで食事を提供するレストランで給仕長をしていた

 

決して裕福ではないものの、ふたり幸せに暮らしていた

 

ところが、不況による人員整理で(社長の案でトランプによりクビになる者が決められた)ラウリは職を失い、イロナのレストランも大手チェーンに買収され、ほぼ同時にふたりは失職する

 

若くはないふたりにとって、失業者で溢れるこの街で再就職するのは難しく、ラウリはバスの運転手の仕事を掴みかけるも健康診断でひっかかり、イロナも寂れた食堂に職を得るも、税務署の指摘に店主が対応できず、給料を受け取ることもなく店はつぶれてしまう

 

店主のいい加減な仕打ちに頭に来たラウリは、「妻の給与を支払え」と店主がギャンブルに興じているところに駆け込むも、店主と仲間たちに袋叩きにされてしまう

 

 

 

苦しい生活が続いて、自尊心を維持することも難しい中で、夫婦仲も時々悪化しながらも何とかやっていく、そして(そういう二人だからこそ)手を貸してくれる人も居る

 

ダメな時に堕ちていくのは簡単だけど、自身を見失わずに踏ん張れる姿は本当に美しいと思う

 

 

明日は、美術学校の生徒たちの映画をご紹介

 

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