引用元:amazon.co.jp
冒頭のシーン
母親探しの旅に出たひとりの青年が、ヒッチハイクをしようと親指を上に突き出している
そのバックにはジョン・レノンの「マザー」が流れている
Mother, you had me but I never had you
I wanted you, you didn’t want me
So I, I just got to tell you
Goodbye, goodbye
お母さん、僕はあなたのものだったけれど、あなたは僕のものじゃなかった
僕はあなたを求めていたけれど、あなたは僕を求めなかった
だから言わなきゃ
さようならお母さん、さようなら
ノース・カロライナで主婦をしているリンダ(テレサ・ラッセル)は、平凡な毎日に加えて、医師の夫ヘンリー(クリストファー・ロイド)が家ではずっと鉄道模型をいじっていることで、退屈を持て余していた
そんなある日、ヒッチハイクでこの町にやってきたというマーティンという青年(ゲイリー・オールドマン)に出会う
初対面にも関わらず、異常に距離をつめてくるマーティンを最初は警戒するリンダだったが、自身が若い時に産んだ(そして両親の計らいで遠くにやられてしまった)のが彼であることが分かり、心を痛める
ジョン・レノンが幼い頃に母親からの愛情に飢えていたことは知っていたけれど、本作のマーティンが母親の気を引きたいが為に意地悪をしたり、辛辣になったりする様子を観て、ジョンのそういう部分とシンクロして少しは理解できた気がした
赤ん坊みたいにヨシヨシされたかったのに、と駄々をこねるマーティンは、気持ち悪く鬱陶しいけれど、彼にしてみれば「みんなが経験したことを僕はまだしてない!」という強い思いがあるのだろう
彼の行動は、まさに原初療法(幼い頃の心の痛みを遡り表現することを必要とする精神病の治療法)を実践しているかのよう
ジョン・レノンが、ビートルズ解散後にリリースした初ソロ・アルバムの一曲目に(決してアルバムの一曲目が相応しい曲調ではないのに)「マザー」を選んだ行動と重なって見える
ジョンの曲は(ビートルズ・ソロいずれも)全部聴いて、知っているつもりだったけれど、もう一度歌詞を確認しながら聴き直さないと
ずっと好きで聴いてきたけれど、正直ジョンのこういう部分については、心のどこかで「重い」と敬遠する気持ちもあった
マーティンがリンダに甘えたり、揶揄ったり、怒鳴ったりする様子を観ているのは、決して心地良くはなかったけれど、(親の愛情を受けて育った者には)想像しがたい渇望を理解するヒントのようなものは得られた気がする
明日は、(ジョン・レノンを聴くのも良いけれど)カウリスマキ監督作品をご紹介