無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

756. We Margiela マルジェラと私たち

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引用元:amazon.co.jp

 

ハイブランドの服は(近年特に)なかなか買えないし、ハイブランドなら何でも欲しいワケでもない

 

そんな中、少し無理をしても欲しいと思わせる、数少ないブランドのひとつがマルジェラ

 

本作は、2017年のオランダ映画(日本公開は2019年)で初のドキュメンタリーとなる

 

 

 

メディアのインタビューも受けないし、ランウェイの最後に登場もせず、その製品にもブランドロゴではなく、カレンダータグと呼ばれる縫い付けがあるだけ

 

1997年以降は写真さえ存在しない、という謎の人物

 

ブランドを離れて久しく、今どこで何をしているのかもわからないマルタン・マルジェラとはどんな人なのか

 

本作では、当時の製作チームの面々がインタビューに応え、仕事場として使っていた建物を訪れ、映像や写真などと共に振り返っていく

 

メンバーの中でも、特に印象的だったのが、共同経営者だったジェニー(メイレンス)

 

ブリュッセルセレクトショップのオーナーを務めていたところ、1983年に審査員として、当時アントワープ王立芸術学校の学生だったマルジェラの作品を見て惚れ込み、5年後に彼と共同でメゾン・マルタン・マルジェラを立ち上げる

 

以来、デザインした後のことに一切関心が無いマルジェラをサポートし続けてきた彼女の話すことは、ドキュメンタリーの枠を超えて「ファッションとビジネス」或いは「創作を集団で行うこと」など、ある意味矛盾・相反する普遍的な問題について語っているようでもある

 

マルジェラチームの解散は、奇しくも彼が業界を去った後に、「服をデザインするデザイナー」がブランドの製品作りを担う時代から、「話題になるコラボレーション先を見つけることが得意な、クリエイティブ・ディレクターという名のイベントプランナー」によって運営されているように映る、今の業界の変化の中で(存在意義に忠実であるためには)自然なことだったのかもしれない

 

コロナが始まる頃までは、そのウチに分かり易く「揺り戻し」が来るだろう(再び職人的なデザイナーがブランドを牽引する)と思っていたけれど、もう少し大きく長い変化なんだろうな、とぼんやり感じながら本作を観終えた

 

 

 

明日は、青木ヶ原の樹海が舞台の映画をご紹介