引用元:Yahoo.co.jp
2017年のイスラエル・ドイツ・フランス・スイス合作
原題は「Foxtrot」
フォックストロットとは社交ダンスのひとつで本作の中でも印象的な場面で登場する
軍の役人が、ミハエル(リオール・アシュケナージー)と妻のダフナ(サラ・アドラー)の自宅にやってくるところからストーリーは始まる
役人が来たのは、息子のヨナタン(ヨナタン・シライ)が戦死したことを伝える為だった
ミハエルは何とか落ち着いた対応をするも、役人が状況をあまり把握できていないことや事務的な対応に終始することから苛立ちを隠せず、ダフネは失神してしまう
そんな中「戦死したのは息子と同姓同名の別人だった」ことが判明する
意識をを取り戻し笑顔を見せるダフネに対し、信じられない過失に怒りが収まらないミハエルは、役人に「今すぐ息子を連れ戻せ」と叫ぶ
その頃、ヨナタンは(前線の兵士ではなく)検問所の警備についていた
若者たちが乗った車が検問所に着き、問題なく通過させようとしたところ、、
戦死の誤報だけでなく、父も母も息子も
「あの時に〇〇していたら(していなかったら)人生がまったく別なものになっていた」
という出来事に遭遇し、翻弄されるドラマティックな人生の持ち主
大抵の人は(生死を分けるほどの)ドラマには縁の無い人生を送っているだろうから、本作がよくデキた娯楽作品として成り立つのだろう
本作は、サミュエル・マオズ監督が経験した出来事(以下青字)を元にしている
朝早く起きられたためしがなく、タクシーを呼んでくれと言う高校生の娘に対して
お金もかかるし教育上も良くないと「皆と同じように5番線のバスに乗って学校に向かえ」と言い聞かせたところ
娘が家を出て30分後にテロリストが5番線のバスを爆破して何十人もの死者が出たというニュースが入る
電話しても繋がらず、人生で最悪の時間を過ごしていると、1時間後にそのバスに乗り遅れた娘が帰ってきた
あまりに大きな絶望に直面すると、それが「勘違い」や「誤報」だと後になって判明しても、「振り上げたこぶし」ではないけれどスグに平穏を取り戻せるものでもないのだろう
ヨナタンの無事がわかった時、興奮と怒りが治まらないミハエルに対して、「良かったじゃないの、無事だったんだから」とダフネが笑顔で夫をなだめるシーンも印象的
(息子の生存が確認できたとはいえ)感情のコントロールの効かなくなる父親と、(同姓同名の青年が亡くなっているというのに)「良かったじゃないの」と笑顔で言える逞しい母親が対照的に描かれる
満足度の高い作品だから許してしまうけれど、音や映像の強弱で観る側を揺さぶろうとする意図が(特に序盤は)強く、製作としては稚拙に感じた