無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

262. ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート

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1969年1月30日、彼らのレーベルであるアップル社の屋上で行われた演奏を収めた映像

 

本国イギリスとアメリカでは53年後の当日となる1月30日限定、日本では2月9日から本日13日までの5日間限定で、39の劇場で公開された

 

といっても二回のみ(二日にかけて一回ずつ)の上映という劇場も多く、よりによって過去最高の感染者数を記録している時期に満席の劇場は避けたいところ、幸運にも歩いて行ける最寄りの劇場で上映されると知り、生まれて初めて(エグゼクティブじゃないのに)エグゼクティブシートなるものを購入

 

IMAXシアターは(今までは対象になる作品は好みじゃないことが多いせいか、縁遠い存在ではあったけれど)どうにも苦手なのだけれど、本作に限ってはその価値は大きかった

 

何と言ってもポール・マッカートニーのベース音(黒いナイロン弦を使っているのが判る)がお腹に響いて、これだけでグルーブが格段に感じられる

 

そして「Get Back」に続く「Don't Let Me Down」でのジョンのヴォーカルに(何回も聴いてきた曲なのに)グッときてしまった

 

観客の大歓声にかき消されてよく聞こえない過去のライブ映像や、ソロになってからのライブも観たことはあるけれど、そんなものとは比較できない興奮が抑えきれない

 

音源は配信でも聴けるようになっていたから、今回劇場に来ることを一瞬迷ったけれど、この声が聴けただけでもう十分

 

「One After 909」では心配なくらいに走るリンゴのドラムが、「Dig A Pony」ではシッカリ「溜め」を効かせていて、さすがにリンゴがリズムの舵を握っていることも認識できる

 

そしてゲストのビリー・プレストンのエレピも(寒空によく似合う音色?)四人の演奏に艶を与えている(この音が無かったらアンサンブルの印象はまったく違うものだったろう)

 

一方で、ジョージの見せ場が殆どないのが残念(もし彼の「Something」が収録されていたら更にとんでもないセッションになっていただろう)

 

周囲からの苦情を受けた警察官が演奏を止めに来るシーンは、サプライズ演奏への街のリアルな反応として面白いけれど、その都度演奏の音量が下がってしまうので多少くどい気がした

 

それにしても(後々のロンドン市警の評判を考えると)演奏を止めさせなくて本当に良かった

 

 

「I've Got A Feeling」や「Dig A Pony」そして「Don't Let Me Down」などを聴いていると、その圧倒的なクウォリティに感動すると同時に、ジョンとポールが既にバンドという枠に収まりきれていないことがわかって切ない気持ちになる

 

本人たちの意志でかろうじて枠に留まっているギリギリの状態は、バンドとしての頂点でありながら、その刹那な美しさは当然長くは続かないことに気付かされる

 

このセッションの後、最も美しいアルバム「アビー・ロード」を録音して解散してしまうけれど、ここまでの高みに達していながら「よくぞもう一枚作ってくれたなあ」と感心してしまう

 

出来ればDVD化して欲しいけれど(それが叶った日には)ヘッドフォンでヴォリュームを目一杯上げて楽しみたい

 

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