無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

916. ろくでなし

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引用元:amazon.co.jp

 

1960年の作品

 

大学四年生の秋山(川津祐介)は秋山物産の社長の息子

 

父親の放任主義もあって放蕩息子としての怠惰な生活を満喫しながら、残り少ない学生生活に焦りも感じていた

 

いつもつるんでいる同級生の北島(津川雅彦)、森下(山下洵一郎)、藤枝(林洋介)は、そんな秋山の恵まれた環境に皮肉を言いながらもその恩恵にあずかりながら無為な日々を過ごしていた

 

ある日、秋山の父親の会社の秘書郁子(高千穂ひづる)が会社の現金を持って銀行に行くところを車で待ち伏せ、強引に車に乗せ金を奪う

 

ところが北島は「そんな芝居もつまらない」とばかりに郁子に金を返すよう仲間に命令する

 

そして冷静な郁子は「大学生にもなってロクデナシなんだから」とい言い残して車を降りる

 

 

 

 

ろくでなしは「陸でなし」と書く

 

陸=土地が平らなところから(性格が)まっすぐな、まともな、

でなし=ではない

 

という意味から、まともでない役立たずな人を表す言葉

 

 

途中までは、昭和中期の青春映画という以上の面白さは無いのか?と不安になったけれど、当時の大学生の気負いと焦り、社会人の諦めと退屈などが上手に描かれていて予想以上に面白かった

 

面白いと感じ始めたタイミングで気付いたのは、みな自分についてよく語ること

 

特に結果がうまく行かなかった時や、不甲斐ない境遇について、しかも誰もが納得するような深い理由や事情ではなく、負け惜しみ程度の抗弁を威勢よく語るのだ

 

「もしかしたら今の日本人と比べて一番変わった部分かもしれない」

 

と、そして(その理由は)当時はそうした語りを受け入れてくれる許容があったのだろうな、と想像してみたりした

 

当時は技術的に、或いは経済的に叶わないことも多く、それに対する不満の解消法ではないけれど、こうした負け惜しみ的な抗弁をし、そして仲間のそれを聞いてあげながら日々を過ごしてきた人も多かったのだろう

 

 

 

秘書の郁子が同居している兄とその妻が口論するシーンがある

 

理由は妻が勝手に月賦で冷蔵庫を買ったこと

 

「まだ洗濯機の月賦も残っているというのに」と怒る兄も、数日後には会社から帰宅し冷えたビールを美味しそうに飲んでいる

 

この何でもないシーンに、イデオロギーなどと難しい言葉を使って議論してはいても、主張とは異なるものをサラッと受け入れてしまう調子の良さ、もとい逞しさを感じる

 

 

ヌーヴェルヴァーグ的なものにしたかったのだろうけれど、若干「取ってつけた」感が拭えないエンディングもご愛嬌

 

 

明日は、ルイジアナ州プランテーションが舞台の作品をご紹介

 

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