引用元:eiga.com
2020年のショートムービー
2019年5月、新宿歌舞伎町近くのマンションで女性に包丁で腹部を刺された殺人未遂事件をもとにしている
ショートムービーの特性を活かした作品で、無理に起承転結を盛り込まず、撮りたいシーン、描きたい筋書きの断片を無造作にまとめて作品にした様な潔さを感じさせる
映画の製作現場でアシスタントとして働く紗希(清瀬やえこ)は、撮影現場で若手俳優の翔(安井秀和)から声を掛けられ連絡先を交わす
過剰な自意識で現場にも馴染めずにいる翔に、何故か惹かれてしまった紗希は、何でも彼の望みを叶えようと欲しいものを買い与える
そんな紗希を「都合のいい女」としてしか見ていない翔の要求はエスカレートしていき、紗希は職場の製作費を盗んだり借金を重ねるようになる
本作で被害者として描かれている男性は、売れない若手俳優(実際の事件ではホスト)
それを経済的に支えるのは年齢的にも経済的にも余裕のある立場の女性ではなく、平均的な収入で慎ましく生活している若い女性
いくら需要と供給がマッチしていようとも、金額的にエスカレートすれば自動的に合法の範囲を越えてしまう
別に年配で裕福なタニマチなら問題ないという話ではないけれど、こういう事件を耳にするたびに「法律で裁けるのはあくまでも行き過ぎたもの(しかも表沙汰になったもの)だけで、そうでないケースの方が圧倒的に多いんだろうなあ」と感じる
敬遠すべきクラウドファンディングやグッズ購入もあれば、身銭を切るべき援助もあり、その線引きは難しい
本作を観て「ショートムービーのエンディングは大事だな」と改めて思った
言い換えると、エンディングが微妙だと(それまでの伏線が短いだけに)「何が言いたかったの?」となってしまう
驚きのどんでん返しや、みんなが納得する結論が、必ずしも必要なわけではないけれど、作り手の短編映画に対する考え方が反映されるものであって欲しいと思う
本作のケースは、思い入れを感じられるラストシーンのインパクトが加わることで、全体のバランスが崩れている気もするけれど、作り手の意図が十分に伝わって来た