引用元:amazon.co.jp
2012年の作品
向田邦子は1981年に亡くなっているので、小説もすべて後追いで読んだ
おそらくリアルタイムでホームドラマをテレビで体験していたらまた違った印象を持ったのかもしれない
小説だと自分のペースで、というか勝手に余韻の間を作ったりして、言葉にならない独特の感情を味わいながら読み進めることができるけれど、テレビだと機械的に一律のテンポで進む感じがどうにも味気なく感じられるような気がする
本作にも若干そういうところはあるし、また扱われるテーマとその描き方に古臭さは感じられる(小説では不倫相手の女性はおでん屋を営んでいるけれど、本作では小さなイタリアンレストランの女性オーナーシェフという設定にするなど、時代的?な補正も施されてはいる)けれど、その違和感が逆に本作の魅力にもなっている
念願のイタリアンレストランを開いた砂子(中越典子)
いつも閉店間際に訪れる殿村(田中哲司)には妻子がありながらも、深い関係になっている
ある日その店に予約の電話が入る
女性の声で「殿村」の名前で一名様
砂子が危惧した通り、当日来店したのは殿村の妻のみつ子(富田靖子)だった
みつ子は、トリッパ(ハチノス)のトマト煮込みと、かつて殿村とよく飲んだワインをボトルでオーダーし、
「口に合わない」
と言って、会計を済ませようとする
対面で言い負かした方が勝ちなのか?
或いは口論せず「負けるが勝ち」なのか?
より美しい方?若い方?堂々と振舞えた方?
肝心の男性を抜きにして勝ち負けもないような気もするけれど、その瞬間は「ふたりの女性の頭の中に男性は存在していない」だろう構図が面白く、そして恐ろしい
向田邦子の小説には美味しそうな料理がたくさん登場する
それらを味わうシーンが単純に「食べる」というだけでなく、大人としての嗜みとして描かれていて(読んでいる自分もとっくに成人していたけれど)憧れるような気持ちで読んでいた
その味に感動したり、嫉妬したり、その料理が振る舞われた背景に思いを巡らせたりするから、それぞれの料理に意味が生まれるし、自分だけの感情と紐ついていく
外食する機会の少ない自分にとっては別世界の話だし、機会の多い人にとっても実生活はなかなか小説のようにはいかない のだろうけれど、、