引用元:amazon.co.jp
2010年の作品
函館出身の作家佐藤泰志の小説を原作とした「そこのみにて光輝く」(2013年)、「オーバー・フェンス」(2016年)と併せての函館三部作
映画化に向けて
・函館生まれの作家による函館を舞台(モデル)にした小説を函館で撮影する
・今の函館の町並みを映像として記録し、後世に残す
・市民参加の映画作りによって町に活力をもたらし、文化活動の新しい形を生み出す
という目的を持って一作目の本作が生まれた
小説には函館をモデルにした海炭市という町で暮らす18組の人々についてのショートストーリーが収められているけれど、映画ではその中から5編が採り上げられている
造船所に勤める兄弟、兄の颯太(竹原ピストル)と帆波(谷村美月)はリストラによって仕事を失ってしまう
大晦日の夜、年越しの蕎麦を食べた後に二人は初日の出を見ようと小銭をかき集めて山に登る
大勢の人たちと無事に初日の出を見た後、帰りのロープウェイ代が二人分は無いからと颯太は歩いて山を下りる
先に山を下りた帆波は麓の売店で兄を待つもいつまで経っても戻らない
プラネタリウムで働いている隆三(小林薫)の妻(南果歩)は最近夜の仕事を始め、服装や化粧が派手になっていき明け方まで帰って来ない
中学生になる息子も生意気になり家族の関係は殺伐としたものになっていく
そのプラネタリウムによく来る少年がいた
ある日上映が終わっても席を立とうとしないアキラというその少年に、隆三は「いつもありがとうな」と言って星に関する本を渡す
アキラの父晴夫(加瀬亮)が町のガス屋の二代目社長だが、本業は厳しく経営も立ち行かないことから浄水器の取り扱いを始める
ところがこの新規事業もうまく行かないことから従業員の不満は止まらず、先代の父親からも苦言を呈されてしまう
さらに妻の勝子がアキラを虐待していることもわかり、晴夫は勝子を殴ってしまう
三部作+「きみの鳥はうたえる」を鑑賞して函館という町にすっかり魅了されてしまったくらいだから、本当に素晴らしいプロジェクトだと思う
しかし、地元の人は(小説を読んでいなかったら)本作に驚いただろうと想像する
「地元の町並みの記録と活性化」と聞けば誰しもここまで暗い話は想像しないだろう
確かに自虐的な要素が強すぎるけれど、作品としての強烈な魅力と共に函館という町が認識され、記憶され、人を呼ぶことになるという意味では大成功なのだろう
かつては北海道で最大の人口があったという函館
吸収合併による増加はあるものの基本的には半世紀以上も人口の減少が続き、斜陽都市と言われてきた
単純に人口が多い(増加している)ことが是でもないし、こうしたプロジェクトで映画の町として魅力的であってほしい
ジム・オルークの音楽が意外にも自然にフィットしていて本作の数少ない救いのひとつになっている
明日は、誰もが知っているあのアメリカ映画をご紹介