無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

931. 骨までしゃぶる

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引用元:amazon.co.jp

 

1966年の作品

 

 

洲崎が舞台の作品は1950年代の「洲崎パラダイス 赤信号」以来

 

一方、本作は明治33年という設定だからその盛況ぶりや雰囲気などの違いも面白い

 

 

そんな洲崎にある遊郭、松風楼に新しく連れてこられた18歳のお絹(桜町弘子)

 

貧しい生活から抜け出せず、一向に借金を減らせないお絹の両親は、可愛い娘をやむなく100円で売ってしまう

 

何も知らないお絹は、美しい着物や広い部屋、そして今まで口にしたことのない豪華なご飯に満足、次第に人気者になっていく

 

ところが、先輩である「姐さん」たちが、脱走に失敗したり、病気になったり、先が見えない生活にくたびれていく様子を見て、そして廓の前で大声で演説する救世軍の書いたチラシを読んで、自分たちが不当に扱われていることを知る

 

お絹たちは雇い主に声を上げるも、日々の食事や家賃に加えて着物や家具などたくさんの経費を引かれた後では、借金はさらに増えていることを知らされる

 

それに奮起し、今まで以上に客を取ろうと頑張るお絹の元に、甚五郎(夏八木勲)という男が客としてやって来る

 

 

 

 

以前、パキスタン映画「娘よ」で、前時代的な女性差別について触れた

 

本作を観ながら(時代も状況も程度も異なるけれど)

 

「日本版の「娘よ」だなあ」

 

と感じた

 

 

もっとも気になった点がふたつ

 

ひとつは、雇い主が勝手に投資(家賃や食費だけでなく、着物や家具まで)して、その経費を水増しした上で天引きすることで、いつまでも廓から抜け出せないという「仕組み」

 

この「仕組み」というものは、一旦作ってしまえば都度の面倒もなく、雇い主にとって都合の良い免罪符にもなるだけに質が悪い

 

もうひとつは「情報」

 

松風楼に連れてこられた初日、新入りに恒例として出されるご馳走(その日はうな重だった)を目にしたお絹は「父ちゃんも母ちゃんもこんな飯食ったことが無いのに、、、一生懸命はたらいて仕送りする」と涙ながらに誓う

 

そしてそのお絹は、わざと怪我をして入院し、病院から警察に駆け込むという「離れ業」をやってのける

 

彼女をそこまで大きく変化させたのは「この環境は異常であること、雇い主が法律違反していること、そして自分たちはここから逃げ出せる権利があること」という知識(情報)を得たこと

 

もちろん救世軍や警察などのサポートがあればこそとはいえ、情報が人を、そして状況を変えることができるいい例

 

 

成長するにつれ表情が変わる桜町弘子がとても魅力的に映り、勇気づけられる

 

 

明日は、ある日本の俳優の、長編監督デビュー作をご紹介

 

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