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1959年の小津映画
都内の川沿い新興住宅地
小学生の男の子たちはみな大相撲に夢中
林家の長男実と弟の勇は、近所の家にお邪魔してはテレビを見せてもらうのが日課になっていた
この兄弟の母親民子(三宅邦子)は、町内会の会計係として集めた婦人会の会費をお隣で組長をしている原口きく江宅のおばあちゃんに預けるも「そんな覚えはない」と言われちょっとした騒動になる
子どもたちはテレビを見るのに外出することを注意する母親に「だったらウチもテレビを買ってくれ」とせがむ
あまりにしつこくせがんだせいで最後は父親の敬太朗(笠智衆)に「子供のクセにうるさい」、「黙ってろ」と叱られてしまう
納得がいかない実は「だったらもう一切口をきかない」と宣言し、学校の授業でもその姿勢を貫き、弟の勇も兄の真似をする
食い下がる実が「大人だってつまんないことばっかり喋ってるじゃないか」と言い放つのが面白い
「お早う」
「いい天気ですね」
「今日はどちらへ?」
「ええ、ちょっと」
善い得て妙である
以下、(オチがある作品ではないけれど)ネタバレ的な感想を
実たちに英語を教えている平一郎(佐田啓二)は「それは必要な潤滑油だ」と反論しながらも「大人はつまんないことは喋るけれど、大事なことは喋らない」と続ける
そして駅のホームで密かに憧れている民子の妹節子(久我美子)と折角会えたのに「いい天気ですね」とやってしまう
本作は二人の子供が中心な話だからか、大人のキャラクターは控え目
その分、杉村春子のキャラが必然的に目立つところも見所
杉村春子といえば
「おばあちゃん、もうろくしちゃって困るよ、本当にもう楢山だよ」
という台詞が出てきてびっくりさせられた
杉村春子の台詞だから陰湿な感じはゼロなのだけれど、それにしても実の母に向かって言う台詞としては強烈
これ以外にも「子供のくせに黙ってろ」や「女の腐ったような」など今なら余裕でアウトな表現も多々
舞台となる家庭の中でも、テレビや洗濯機、炊飯器などはまだ普及する途中で、さすがにインパクトがあるけれど、こうした言葉遣いに60年という時の長さを感じる
子供が中心の話だけに軽い作品をイメージしていたけれど、これがなかなか「爽やかな深み」のある作品