無人島シネマ

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743. 笑う故郷

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引用元:amazon.co.jp

 

2016年のアルゼンチン・スペイン合作

 

原題は「El ciudadano ilustre」= 著名な市民

 

主人公が故郷の名誉市民になる話だから、邦題も「名誉市民」でも良かった気もする

 

 

 

ノーベル文学賞を受賞したアルゼンチン出身の作家ダニエル(オスカル・マルチネス

 

彼はアルゼンチンを離れてから40年、一度も故郷に帰ったことがない

 

しかし彼の小説には、いつも故郷の田舎町サラスを連想させる(しかもネガティブな部分の)表現が含まれていた

 

受賞してからというもの、特に忙しい日々を過ごすダニエルの一日は、秘書が読み上げる仕事のオファーに対して「受ける・受けない」の返事をすることから始まるようになった

 

「(創造者として)大衆から拒絶されるような刺激を維持したい」という想いから、表彰式や社交の場に対してシニカルな気持ちが強いダニエルは、秘書が読み上げる殆どのオファーに「受けない」と返事をしていく

 

 

ある日、生まれ故郷のサラスから「名誉市民」の称号を与えたく、その記念式典への参加をお願いしたいとのオファーが届く

 

最初は「あり得ない」と一笑に付すダニエルだったものの、徐々に故郷に対する想いが募り、今がそのタイミングかもしれない、と40年振りの帰省を決意する

 

 

 

古典落語に出て来そうな「羨望」や「嫉妬」が、エスカレートして歯止めが利かなくなる過程の中で、ヨーロッパの「気取り」と、南米の「対人距離の近さ(に伴う面倒臭さ)」を、嫌味にならないラインの手前で巧みに描いている

 

人間の奥底に共通してある、醜い部分を煮詰めたスープを、ずっと飲まされているような映画

 

 

人生スイッチ」で父親役を演じたオスカル・マルチネスの、ダメ人間を演じている様子が、サディスティックにスープをかき混ぜているように思えて仕方が無かった

 

観終わって「うーん」と唸ってしまった 快作

 

 

 

明日は、ヒッチコック作品をご紹介