引用元:amazon.co.jp
左幸子監督作品
滝ノ上市蔵(井川比佐志)は、国鉄の保線員として30年勤め上げた
そして妻の里子(左幸子)は、30年間彼を支え続けてきた
国からも功績章を与えられ、誇らしく思う反面、国鉄の組合員でもある市蔵には様々な想いが湧き、素直に喜べない
自宅でご馳走を作り、ささやかな宴会を始めるも、市蔵の気分は晴れず、そんな所に娘の由紀(市毛良枝)が恋人(長塚京三)を連れて来る
頑固な市蔵にフィアンセを紹介する「絶好の機会」と里子が考えたアイディアは、自身のお祝いの席に余所者を呼んだ、と気分を害した市蔵によってぶち壊されてしまう
最後には無事に娘が結婚するまでを描いた家族映画でありながら、国鉄合理化、マル生、第二組合鉄労、スト、婦人会などに翻弄されていく職員とその家族、そして機械化される保線の仕事と、それに伴う働き甲斐の無さを嘆く職員などの様子が克明に伝わってくる
炭鉱をテーマにした映画でよく描かれる、「いつかは受け入れなければならない変化」
最初に国(鉄道省)としてスタートしたことには、その必要性も意義もあったろうけれど、戦争引揚者の雇用対策としての受け皿にしたり、選挙対策として運賃の値上げを中止したり、民間企業に配慮して(既存インフラを活かせる)他業種に参入しなかったりすれば、当たり前の結果として赤字になる
日本国有鉄道として1964年に赤字に転落してから、1987年に発足する分割民営化まで23年かかっている
簡単とは思わないけれど、もっと早く決断できなかったのだろうか
「(経済の)成長過程でその主導権を民間に渡すべき」
という考えが、社会主義の行き詰まりで立証されたのと同じことか
JR北海道は、人口密度や鉄道依存度の低さなどもあり、民営化後も路線廃止を続けながらも苦しい経営が続いている
特に長塚京三には、まだ存在感もなく、一瞬誰だかわからなかった
これ程の社会的な映画の監督も演技も、同時にこなす、左幸子という女優
「飢餓海峡」(大金を預かる八重の役)の印象しかなかったけれど、これから彼女の出演作品を観ていこうと思う
明日は、40年ぶりに故郷のアルゼンチンに帰る映画をご紹介