無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

497. 四十七人の刺客

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引用元:amazon.co.jp


池宮彰一郎の小説を1994年に映画化

 

市川崑監督による「忠臣蔵」を新たな解釈で描いた作品

 

 

 

あまりに有名なストーリーなのであらすじは省略するけれど、本作の最大の特徴は、大胆な構成(松の廊下も、討ち入り前夜に大切な人との別れに涙する赤穂浪士たちも描かれない)と、討ち入りに至るまでの赤穂浪士 vs. 吉良、上杉家の攻防の膨らませ方だろう

 

 

大石倉之助(高倉健)や赤穂藩士たちは塩の相場を操作することで莫大な利益を得て、その金をつぎ込んで「吉良が各藩に賄賂を要求している」という話を江戸中に流布させる

 

これによって民衆の吉良への反感を煽ると共に、討ち入りを恐れた近隣の諸大名に吉良邸を移転させるよう促すことに成功する

 

 

一方の上杉家側も家老、色部安長(中井貴一)の指揮により、吉良邸を迷路や落とし穴など赤穂の討ち入りに備えた屋敷にし、吉良上野介西村晃)をそこに隠居させる

 

 

 

 

 

鑑賞中、ふと「まさにロジスティックスだなあ」と感じた

 

現在では「物流」という意味で使われる言葉けれど、元々は兵站(へいたん)を表す軍事用語

 

計画を練って、必要な兵器や人員を算出、確保し、その補給体制や状態を維持するしくみを整えること

 

 

ちなみに戦国時代には、一日当たり兵士に以下の支給をしていたという

 

   水  一升

   米  6合     多くない?

   塩  一勺(18ml)

   味噌 二勺(36ml)

 

大きな戦になれば、これを何万人分、しかも一度にではなく数日分に分けて(一度に多くの米を支給すると酒にして飲んでしまうから)、時には山の中まで届ける必要がある

 

この供給体制を継続するには、計画性も交渉力も資金力も必要となり、当時如何に重要な役割だったかが想像できる

 

 

 

そういえば本作では(タイトルで刺客と謳いながらも)剣の達人は登場しない

 

既にいくつかの「忠臣蔵」を観ている方には、本作の斬新な切り口も面白いだろう