
引用元:eiga.com
これまで観てきたアイルランド系の作品の中には、例えば極度の貧しさに苦しむ家族が(5人目とか6人目の)子供を産んだり、今の日本人の感覚では理解しづらいところが多々あった
そしてその行動要因の中に、カトリック教会の存在が見えると、「ああ、また、」という風に理解を諦めざるを得ないような感覚になってきた
本作を観て、そのモヤモヤが解消するなんていう期待はないけれど、少しは理解に近づきたい思いで、日比谷コンベンションホールでの試写会に行ってきた
マグダレン洗濯所
アイルランドに1996年(僅か30年前)まで実在した、カトリック教会が運営する女性用の強制収容・更生施設
本作は、ここを舞台にした小説「ほんのささやかなこと(Small Thing Like These)」が原作
5人娘を抱える一家の長として、アイルランドの小さな町に炭鉱商人として暮らすビル(キリアン・マーフィ)
クリスマスを迎えようとする頃、石炭を届けに訪れた地元の修道院で、少女から「ここから出してほしい」と懇願される
若い女性たちが行き場もなく苦しんでいる現実を突きつけられたビルは、見て見ぬふりをすることが賢明だと理解しながらも良心の呵責に悩み、ずっと心ここにあらずな状態で日々を過ごしていた
ビルが行動しない方が賢明だと思うのには、地元で絶大な権力を持つマグダレン洗濯所は、隣接する女学院も運営しており、揉め事を起こすと娘たちの将来はもちろんのこと、自身の事業にも大きな不利益が容易に想像されること(優しさから迂闊な行動は控える様、妻からも釘を刺されてしまう)
一方、随所に差し込まれる彼の幼少期のシーンに、家族ではない善意の人たちによって救われてきたことが描かれていることによって、葛藤しながらも行動を起こそうとするビルの心情が伝わってくる
娘たちの様子や、クリスマスギフトに登場する本などに「若草物語」へのオマージュを感じさせると同時に、監督のティム・ミーランツは、本作の制作中に黒澤明の「生きる」と小津安二郎の「東京物語」を観ていたらしく、特徴的なカメラワーク(儀式のようにブラシを使って炭で汚れた手を洗うシーンは、彼と同じように小津作品に影響を受けたヴィム・ヴェンダースの「パーフェクト・デイズ PERFECT DAYS」を連想させる)に加えて、古い邦画の観念的な部分も本作に影響を与えている様に思えた
観終わってすぐに原作小説を注文した
観始めて数秒で小雨の降るアイルランドに気持ちが入っていける本作の素晴らしい映像と音響を、小説の描写と突き合わせる心地よい作業をしているような気分で読み進めているところ
明日は、何とも気になるタイトルのショートムービーをご紹介