
引用元:twellv.co.jp
これまでにテレビで2回、配信で1回観た作品
数年経つと再び観たくなるのは、本作の主人公溥儀(ふぎ)ほど「時代に翻弄された」人物もいない、と思わせる運命性とそのスケール感、そして演じているジョン・ローンの優しいのか冷酷なのかわかりかねる表情など、理由を挙げればキリが無い
清という、1616年から約300年間、中国本土とモンゴル高原を支配してきた王朝の最後の皇帝、愛新覚羅溥儀(あいしんかくら ふぎ)の生涯を、ベルナルド・ベルトルッチ監督が描いた大作
溥儀の自伝「わが半生」を原作として、ベルトリッチ自身が脚本も担当している
1908年、第11第皇帝・光緒帝の崩御に伴い、西太后はまだ二歳の溥儀を紫禁城に呼び出す
乳母のアーモに伴われ、紫禁城に入ってからも「おウチに帰れる?」とばかり言っていた溥儀は、第十二代皇帝に指名される
そして10代になった溥儀は、家庭教師であるイギリスの中国学者・レジナルドから様々なことを学び成長するも、紫禁城の外には一歩も出られない息の詰まる生活を続けていた
その後は、宦官の不正(美術品などの盗難)を暴く改革などに乗り出すも、周囲の理解や協力を得られず、後に北京政変と呼ばれるクーデターにより、紫禁城から追放されてしまう
そんな行き場のなくなった溥儀やレジナルドを助けたのは、(レジナルドの母国である)イギリスではなく大日本帝国だった
日本軍によって守られ過ごす天津での生活は、溥儀にとって妻(第一夫人、婉容)と社交に明け暮れる楽しい日々だったが、第二夫人の文繡にとっては退屈な毎日となり、溥儀に離婚を申し出る
やがて蒋介石が上海を制圧したという知らせが入ると、すぐさま日本軍の甘粕正彦(坂本龍一)らから日本公使館に呼び出された溥儀は、1934年に満州国の皇帝となる
その頃、文繡が居なくなり、話し相手を失った婉容の元に、溥儀の遠縁で、東洋の宝石と呼ばれる川島芳子が現れ、婉容をアヘンに、そして自身に溺れさせていく
実の母をアヘンで失った溥儀にとって、婉容がアヘン中毒になったことは許し難く、日本に招待された際にも妻を伴わずに出発してしまう
日本では大そう歓迎されて帰国するも、満州国では張景恵が後任の皇帝として認められようとしている事態に、自身の無力さ思い知らされた溥儀は失望する
戦後、日本軍の残虐な行為を事実上承認したことについて、自らの意志によるものか否かを、激しく尋問される溥儀だったが、(日本軍による強行と考える周囲に対して)溥儀は自分が望んだものだと言い続ける(ここについては、溥儀のプライドというかロマンティシズムによるところも大きく、本人への確認がベストな手段とは思えない)
その後も溥儀は翻弄され続け、やがて終戦を迎える
それは満州国の敗戦、中国の内戦の終結、そして彼自身が戦犯になることを意味するものだった
ソビエトでの5年間の拘束の後、中華人民共和国となった祖国の都市、ハルビンに強制送還された溥儀は、駅の洗面所で両手首を切る
監視人に見つかり、いち命をとり留めるも、溥儀は薄れていく意識の中で、紫禁城で過ごした幼い頃の日々を思い出していた
映画はこのシーンからスタートする
両手首から血が流れるショッキングな映像と、回想に耽るジョン・ローンの姿が流れる度に、「ああ、またこの映画を観直しているんだな」と不思議な確認作業をしてしまう
ベルトルッチ監督にとっても、ジョン・ローンを始め、何人かのキャストにとっても最高傑作となった作品だと思う
坂本龍一についても、「戦場のメリークリスマス」では、大島渚が役者の個性を活かそうとしたのに対して、本作でのベルトリッチにはそうした気配はまったく感じられず、それが本作を一層高い位置に押し上げている気がする
あっという間の162分
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