
引用元:toeiv.jp
先日鑑賞した「暴力をめぐる対話」では、昔から民衆のデモによって権利を勝ち取ってきたフランス人の哲学のようなものに触れることができた
エンドロールの後に、短い監督へのインタビューがあり、その中で「こうした文化の無い日本の人たちに是非観て欲しい」という風な発言もあった
確かにフランスの様な規模で起こった社会運動は(もう何十年も)無いけれど、1918年の米騒動は、間違いなく日本の民衆が起こした社会運動だろう
本作は、その発端になった富山県の「越中女房一揆」をベースにしたお話
大正7年の夏、シベリア出兵により戦地にコメを送ることで、その価格は日に日に上がっていく
富山の海沿いにある小さな町に暮らす女たちは、米俵を背負ってコメ屋から海岸の輸送船まで、何度も往復する重労働に明け暮れるも、家族に食べさせるコメは高くてなかなか買えず、生活に窮していた
女たちは、オババ(室井滋)を先頭に集団で、米屋の黒岩(石橋蓮司)のところに行き、「今までの値段でコメを売ってくれ」と頼み込むも叶わず、黒岩の要請を受けた警察によってオババは逮捕されてしまう
いと(井上真央)の家も、夫は出稼ぎで居らず、幼い息子・利夫(三浦貴大)と老いた母のタキ(夏木マリ)を食べさせることができなくなり、近所にコメを分けてくれと頼み込むも断られてしまう
女たちは最初「逮捕する価値もない」と黙殺され、その後に手を焼いたコメ屋の買収工作によって女たちの結束も崩れそうになる
この騒動が最終的に勝利したのも、その後に全国に飛び火したのも、新聞による報道の影響力が大きいのだが、(部数を稼ぎたい新聞社による)事実の誇張もあり、結果オーライではあるけれど、改めて報道機関の恐ろしさを感じさせられる
監督の本木克英だけでなく、室井滋、柴田理恵、西村まさ彦、左時恵、立川志の輔といった俳優陣も富山県出身
撮影も、海岸や当時米蔵として使われていた建物など、富山県内で行われ、映画の公開も富山で先行上映というこだわりぶり
タイトルから、コメディ要素の高い作品を想像していたけれど、笑いも恋愛も無い、真面目な作品
ちなみに実際の米騒動は、その後炭鉱騒動(賃上要求)へと飛び火し、多数の逮捕者を出した後に、寺内内閣は退陣、原内閣が物価の安定に取り組むことになる
明日は、くるりの音楽と映画の相性は最高だな、と再確認する作品をご紹介