無人島シネマ

毎朝7時頃更新 忘れてしまうには惜しい映画 と雑記

633. ひとよ

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引用元:eiga.com

 

2019年の白石和彌監督作品

 

 

大雨が降る日の夜、茨城県大洗でタクシー会社を営む母こはる(田中裕子)は、夫を自社の車で轢き殺してしまう

 

 

それは、自身と三人の子供に対して、暴力を振るい続けた夫から解放される為に、悩みに悩んだ挙句の末のもので、身内に今後の相談もしたうえでの犯行だった

 

これで暴力を振るわれることもない、自由になれる、何にだってなれる

 

そして、「15年後に必ず戻って来る」と子供たちに言い残して、こはるは自首する

 

 

 

以来、周囲のサポートもあって、会社も何とか維持しつつ、長男の大樹(鈴木亮平)、次男の雄二(佐藤建)、末っ子の園子(松岡茉優)は成長する

 

雄二は作家に、園子は美容師になる夢を抱えていたが、大樹も含め三人とも、母の犯した罪の影響による挫折を繰り返すうちに、それぞれが大きな歪みを抱えていく

 

 

 

 

子どもたちを守るために、確信を持って犯した罪

 

15年が経ち、刑期を全うしたにもかかわらず、自宅に戻った母を、子供たちは素直に迎え入れることができない

 

 

それまで意識する必要のなかった家族の関係が、母が戻ってきたことでボロボロになっていることを自覚させられる子供たち

 

 

子供にとって「親に叶えてもらう環境」がどれほど当たり前のものなのか、それが無いと子供はどうなってしまうのか

 

その最悪のケースを示されているような気になる、救いようのない展開の連続

 

 

俳優陣の演技力の高さに圧倒される中で、佐藤健はやや役不足に思えた

 

家族の中で、一番幼稚でとんがったキャラクターは、若さと勢いで演じやすい役どころではあるけれど、本作の中では重要なポジション

 

この役で、もう少し深みが出ていたら、とんでもない作品になっていた気もする

 

 

タイトルの「ひとよ」は一夜の意

 

「自分にとってどんなに大きな意味を持つ夜でも、他の人たちにとっては一夜にしか過ぎない」

 

こはるの放つ、この言葉の意味を、どう受け止めればいいのだろうか

 

 

 

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